火の闇 飴売り三左事件帖

火の闇 飴売り三左事件帖
火の闇 飴売り三左事件帖
(ひのやみ あめうりさんざじけんちょう)
北重人
(きたしげと)
[捕物]
★★★★☆

2009年8月に急逝された作者の遺作で読まずに大事に取っておいたが、遂に抑えられず読んでしまう。人からおススメの時代小説家を尋ねられると、つい最近まで、北さんの名前を挙げることが多かった。(故人でエスタブリッシュな大御所を挙げることを控えて、現役の時代小説家を推すことにしているため)

主人公は飴売りの三左。武士を捨てて十歳年下の恋女房の小紋と市井で暮らしていた。腕が立ち、明るく、我意を通さず、口が堅く、人を中傷しない人柄で、皆が相談したくなる。三左は、『蒼火』にも、主人公の探索を助ける脇役として登場し、印象に残るキャラクターだった。

旧知の女金貸しが殺された事件「観音の辰」、身投げした女房の恨みを晴らそうとする男を追う「唐辛子売りの宗次」、三左の同郷から出てきて飴売りになる男が出てくる「鳥笛の了五」、同じ長屋の住人たちの面倒をみる老婆を描く「佛のお円」と、表題作が収録されている。

飴売り三左の活躍を連作形式で追っていき、最後の表題作で、三左が武士を辞めることになった事情を明らかにする構成。三左の人柄を知ったうえで、過去の話を読むことになり、共感がより深まる。

モデルとなった、河井田藩譜代十二万石をてっきり作者の故郷(酒田)近くの東北の藩と思っていたが、よく読んでみると、中山道に近くの上野国もしくは信州のようだ。

読み終えてみて、間違いなく面白かったという余韻とは別に、大切な人を失ったという、大きな喪失感を感じてしまう。(毎度のことではあるが)ある程度年齢を重ねてから、時代小説を書かれる作家の方が少なくないが、その活躍期間が少しでも長く続くことを切に願っている。

◆主な登場人物
土屋三左衛門:飴売りの元締で、元河井田藩士
小紋:三左衛門の女房
お辰:金貸し
おみつ:お辰に鐘を借りてい左官の女房
喜助:おみつの息子
与左衛門:市ヶ谷八幡の境内を仕切る香具師の元締
太平次:与左衛門の従兄弟
九道の鎌五郎:岡っ引
市兵衛:湯島天神辺りの香具師の元締
宗次:唐辛子売り
曾根来三郎:御家人
西慶:牛込・天日院の納所坊主
神明の亥蔵:
多度津瓶右衛門:河井田藩の側用人
了五郎:河井田領内の百姓
お円:三左と同じ長屋に住む老婆
勘助:鍵職人
おちか:勘助の娘
五十鈴屋久蔵:杉森稲荷の岡っ引
遠井靫右衛門:河井田藩江戸家老
水木重右衛門:河井田藩目付
八瀬与十郎:河井田藩勘定方
梁谷庄五郎:河井田藩御門下役
芦原作蔵:河井田藩足軽小頭

物語●「観音のお辰」三左が武士を辞めたばかりの頃、世話になった金貸しのお辰が殺され、三左のよく知る男に嫌疑がかかる…。「唐辛子売りの宗次」三左の旧知の唐辛子売りの宗次の恋女房が身投げをし、宗次は恨みを晴らすべくある男を付けねらう…。「鳥笛の了五」三左は、同郷(河井田領内)出身の百姓・了五郎を飴売りの見習いとして預かることになった…。「佛のお円」老婆・お円は、面倒見がよく人柄がよくて長屋の者たちの面倒を見たり、相談に乗ったりして、陰で佛のお円さんと呼ばれていた…。「火の闇」江戸詰になった土屋三左衛門は、剣術道場の同門で弟のように面倒を見ていた八瀬与十郎と再会をはたしたが…。

目次■観音のお辰/唐辛子売りの宗次/鳥笛の了五/佛のお円/火の闇/解説 葉室麟

装画:蓬田やすひろ
装幀:蓬田やすひろ
解説:葉室麟
時代:明示されず
場所:出世稲荷、三河町、佐久間町、南茅場町、第六天社裏手、湯島天神、新寺町、新堀留町・稲荷新道、赤城神社、神田明神下同朋町、熱田神社、采女ヶ原、藍染川、松枝町、神田堀、下谷山崎町、新シ橋、難波橋、外桜田、磯部大神宮、榎坂、青山、田原町ほか
(徳間書店・徳間文庫・629円・2011/09/15第1刷・311P)
購入日:2011/09/10
読破日:2011/09/30

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