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猫の似づら絵師

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猫の似づら絵師
猫の似づら絵師
(ねこのにづらえし)
出久根達郎
(でくねたつろう)
[ユーモア]
★★★★☆

「おんな飛脚人」(講談社)で、人情派時代小説の面白さを満喫させてくれた作者の最新作。今回はユーモアにますます磨きをかけ、落語や戯作のようなつくりになっている。

主人公の銀太郎と丹三郎の言動が膝栗毛の弥次喜多みたいで何ともおかしい。また、二人の隣人になる源蔵(風呂に入ることが嫌いで垢だらけということから、忠臣蔵の赤垣源蔵をもじってつけられた)のキャラクターがとりわけおかしい。うどん作りを生きがいにしているのだが、いろいろ工夫を凝らし改良を試みるのだが、ちっとも上達しない。二人があきれながらも毎回、鬼役(毒味役のこと)を務めるシーンがいい。

各話の冒頭にある中さんの本文挿画が粋で、読む気を増進させてくれる。

◆主な登場人物
銀太郎:猫の似顔絵描き
丹三郎:貧乏神売り
源蔵:うどんづくりを道楽とする金時長屋の住人
おさえ:本八丁堀の貸本屋雨屋の娘
きの:鰹節問屋の息子の囲い者
正吉:銀太郎の一番下の弟
薄雪:吉原の部屋持ちの遊女
島八:土人形に色を付ける職人
かよ:南飯田町の新屋の娘
元:新屋の女中
岸八郎:煮豆屋の店番の若者
五助:葉茶屋駿河屋の手代
格之助:下谷竜泉町の猫屋
素庵:医者
おせい:うどん屋六べえの娘
忠造:地回りの親分

物語●「猫に鰹節問屋」勤めていた貸本屋のリストラで、無職になり、銀太郎は猫の似顔絵描きを、丹三郎は貧乏神売りをすることになる…。「猫にマタタビ初春に竹」猫の似顔絵描きの商いで、ある寺の境内に入ったところ、無数の猫の絵馬がかかっていた。そこは猫寺と呼ばれていた…。「招き猫だが福にあらず」銀太郎は、両国広小路で途方に暮れて困っていた弟の正吉に会った。正吉は奉公先の乾鰯問屋の主人から薬を買ってくようにいいつかったのだが…。「窮鼠猫を好む」丹波の篠山で生け捕りにされたという牛ほどの図体のある鼠の見世物が話題になり、銀太郎らが商売の宣伝も兼ねて見に行くことになった…。「闇夜の鴉猫」入谷田んぼのところで、銀太郎は葉茶屋の手代に呼び止められ、猫の似顔絵を頼まれるが、仕事を頼まれたことを内緒にすることを約束させられたうえで目隠しをされる…。「虎の威を借る猫」深川・相川町に蕎麦屋、一膳飯屋、鮨屋など食べ物屋が多く軒を並べる通りがあり、どの店の屋号にも、なぜか猫の字が使われていた…。

目次■猫に鰹節問屋/猫にマタタビ初春に竹/招き猫だが福にあらず/窮鼠猫を好む/闇夜の鴉猫/虎の威を借る猫/変わった商売――あとがきにかえて

装画:「千社札 粋のグラフィブム」マリア書房刊より
装幀:菊地信義
本文挿画:中一弥
時代:文化十四年ごろ
場所:南八丁堀、上野池之端、両国、吉原、門前仲町、采女ヶ原、南飯田町、入谷、相川町
(文藝春秋・1,429円・98/09/20第1刷・264P)
購入日:98/09/06
読破日:98/09/12

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