近藤勇

近藤勇

(こんどういさみ)

秋山香乃

(あきやまかの)
[新選組]
★★★★

『歳三 往きてまた』(文芸社)など、新選組の隊士を描いた作品で注目される、新進女性作家の書き下ろし長編時代小説。

実際には番組をほとんど見ていないにもかかわらず、NHKの大河ドラマの影響からか、近藤勇のイメージが香取慎吾の方に傾きかけている。えらが張り、アゴがしっかりとした、肖像写真のイメージに戻したいと思っていたところで、ちょうど、この本と出合った。

著者は若い女性の作家だったので、ヒロイックな新選組像が展開されるのかと思っていたら、端正にかつオーソドックスに新選組の隊士群像を描いていて好感が持てた。とくに、目を見張ったのが、伊東甲子太郎の描き方である。裏切り者として扱われ、敵役のように憎々しく描かれることが多い中で、品格が高く、節義をもって公儀の行く末を憂いながら勤皇に生きた爽やかな人物として描いている。秋山さんによる、伊東甲子太郎を主人公とした作品を読んでみたいと強く思った。

激動の中で、主義の違いから取る行動に違いはあっても、誰が善くて誰が悪いといったものはないように思う。結果論で捉えると歴史になり、プロセスの中で埋もれているものを取り上げるのが小説の役目であろうか。新選組が日本人に好まれるのは、小説やTV、映画などのおかげであろう。

物語●文久三年の幕開け。天然理心流の道場“試衛館”で、宗家四代目近藤勇が師範席に座して見守る中、初稽古が行われた。土方歳三と山南敬助が立ち会っているとき、「近藤さん、京へ行く気はないか」

食客の永倉新八と原田左之助が叫びながら飛び込んできた。「幕府が上京する公方様警護と攘夷のための人員を府内浪士の中から募るとってェ、話なんだよ。それによ、一緒に応募しないか。近藤さん、あんたいつも言っていたじゃないか。天領に生まれたからには徳川家のために仕えたいってよォ。絶好の機会だ。京に行こうぜ」

試衛館の門弟・食客たちは口々に上京を決める。最後に勇は親友の歳三を見た。勇も歳三も武州の百姓の出で、侍になることに焦がれ、同じ夢を見ていた。(俺たちは侍になる)(刀を腰にぶち込んで、公儀のために尽くせるというのか。この俺が。トシよ)
この半年後、彼らは京で新選組を名乗っていた。「誠」の旗印の下、反幕派の男たちを戦慄させた鉄の組織の誕生である…。

目次■なし

装画:宇野亜喜良
装幀:芹澤泰偉
時代:文久三年(1863)正月
場所:試衛館、祇園の会所、池田屋、壬生の屯所、東山の料理茶屋「明保野」、九条河原、島原の角屋、西本願寺、大坂新町ほか。
(ハルキ文庫・720円・04/06/18第1刷・315P)
購入日:04/07/07
読破日:04/08/03

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