忠直卿御座船

忠直卿御座船
忠直卿御座船
(ただなおきょうござぶね)
安部龍太郎
(あべりょうたろう)
[短編]
★★★★

ようやく新居への引越しが完了し、本が購入できるようになった。『難風』というタイトルで、1998年に講談社から刊行された歴史小説集。

「佐和山炎上」に描かれている八十島庄次郎の父が、関ヶ原の戦いで、三成の使い番として島津義弘の陣所におもむき、兵を動かすように要請したが、下馬の礼を取らなかったために島津の将士の怒りを買った、八十島助左衛門という登場人物設定が興味深かった。
岡田以蔵を描いた「斬奸刀」は、安部さんの幕末観がうかがえて面白い。ぜひ、同じテーマで長篇を書いてほしい。

「玉かんざし」の伝奇的な魅力。「難風」とは、英語でワイルド・ウインドで、船を危うくする嵐のことで水夫の言葉。

物語●
「峻烈」姉川の戦いで浅井、朝倉の連合軍を破った織田信長は、二条城で将軍義昭と対面した…。
「玉のかんざし」伊奈正吉は釜山の倭館に妻子を残して、名護屋城の普請場で、石工として、働いていた…。
「伏見城恋歌」石田三成が挙兵したという噂が日増しに強くなる中、伏見城を守る木下勝俊は、松の丸(豊臣秀吉の側室・京極竜子)の訪問を受けた…。
「佐和山炎上」東西の激突を目前に控えたとき、石田三成に仕える八十島庄次郎は、三成の三男八郎の教育係を務めていた…。
「忠直卿御座船」松平忠直の守役・清水丹波守秀綱は、二ヵ月かけて薄氷を踏む思いで、天龍丸に乗せて、忠直を大坂まで連れてきた…。
「魅入られた男」越前から出てきたばかりで餓えに苦しむ出家僧が、〈武芸の心得がある平家物語に堪能な出家僧を求める。謝礼は乞うに任す〉の張り紙をした問丸を訪ねた…。「雷電曼陀羅」春場所の三日目、雷電は友千鳥と対戦した…。
「斬奸刀」土佐の岡田以蔵は、手足に手甲脚絆を巻き、六尺ふんどしひとつで夜な夜な糺河原で、手当たり次第に犬を斬った…。
「難風」駐日イギリス公使ラザフォード・オールコックの通訳を務める丸一伝吉が大型蒸気船サンプソン号で江戸湾へやってきた…。

目次■峻烈|玉のかんざし|伏見城恋歌|佐和山炎上|忠直卿御座船|魅入られた男|雷電曼陀羅|斬奸刀|難風|解説 島内景二

カバーデザイン:鈴木一誌
解説:島内景二
時代:「峻烈」元亀元年、「玉のかんざし」天正ニ十年、「伏見城恋歌」慶長四年、「佐和山炎上」慶長四年、「忠直卿御座船」元和九年、「魅入られた男」寛正元年、「雷電曼陀羅」寛政三年、「斬奸刀」文久二年、「難風」安政六年
場所:「峻烈」二条城、「玉のかんざし」名護屋城、「伏見城恋歌」伏見城、「佐和山炎上」佐和山城、「忠直卿御座船」伊予沖、「魅入られた男」寂光院、「雷電曼陀羅」本所回向院、「斬奸刀」糺河原、「難風」高輪東禅寺 ほか
(講談社文庫・590円・01/08/15第1刷・345P)
購入日:01/09/08
読破日:01/10/05

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