『義妹にちょっかいは無用にて(7)』|馳月基矢|双葉文庫
馳月基矢(はせつきもとや)さんの時代小説シリーズ、『義妹にちょっかいは無用にて(7)』(双葉文庫)を紹介します。
本シリーズは『拙者、妹がおりまして』のスピンオフ作品。主人公を手習所を手伝っていた大平将太と縁談のために長崎から出てきて大平家の養女となった理世の二人に交代してスタートした「義妹にちょっかいは無用にて」の第7巻にして最終巻です。
将太が不在の間に理世をはじめ大平家の人たちはいったい何を思っているのでしょうか。そして教え子や将太の友人たちなど残された者たちのその後は? 幕府の隠密の修行を始めた将太は八丈島に行ったり、新たな役目を担ったりと、今回も展開から目が離せません。
あらすじ
一言もなく姿を消した相手を想い続けるのは、愚かなことかもしれない――。
そう思いながらも、理世は縁談をすべて断り、大平家の一員として生きていくと決めていた。将太がいなくなっても、決して泣かなかった。
一方、逐電した形となった将太は、隠密の任で八丈島へと渡り、流人・近藤富蔵との再会を喜ぶ。
やがて一年ぶりに江戸へ戻るが、その姿に人々は驚きを隠せなかった。義兄妹という立場ゆえに叶わぬ恋と思われた二人に、本人たちすら予想しなかった“納得の結末”が待っている――。笑顔あふれる完結巻!(『義妹にちょっかいは無用にて(7)』カバー裏の内容紹介より)
ここに注目!
両想いでありながら、「義妹」という関係にとらわれ続けた将太と理世。 将太は将来に思い悩み、大平家を出て、間宮林蔵のもとで隠密修行を始めます。物語はここから大きく動き出します。
本作では、将太不在の大平家やその周囲の人々の姿が丁寧に描かれます。
矢島龍治と千紘のあいだには双子が生まれ、手習所・勇源堂の教え子たちは、新しい師匠・霖五郎のもとで成長を遂げています。
一方、理世は空虚を抱えながらも、大平家の医術の手伝いに打ち込むことで自分を保とうとします。
将太への想いを断ち切れず、縁談の話もすべて断り続けていました。
将太は八丈島で隠密の任に就き、近藤富蔵との再会を果たします。
出奔から一年、隠密としての修行を終え、林蔵からの密命を受けて江戸へと戻ることに……。
本書をもって、「終わりよければすべて良し」と呼べるような大団円が待っているのでしょうか。結末は、ぜひご自身の目でお確かめください。
ちなみに、シェイクスピアの『終わりよければすべて良し』(All’s Well That Ends Well)は、単純なハッピーエンドの物語ではありません。
「拙者、妹がおりまして(妹おり)」から始まり、「義妹にちょっかいは無用にて(妹ちよ)」へと続いた全17巻の世界観――。
この作品世界を愛する読者として、いつかさらに成長した登場人物たちと、再び物語の中で出会えることを願ってやみません。
書籍情報
義妹にちょっかいは無用にて(7)
馳月基矢
双葉社 双葉文庫
2025年4月12日第1刷発行
カバーデザイン:bookwall
カバーイラストレーション:Minoru
●目次
第一話 君のいない日々
第二話 来てみりゃ八丈は情け島
第三話 狸退治
第四話 新たな縁
本文238ページ
文庫書き下ろし
■今回取り上げた本
