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蠱師一族が動き出し、澪に危険が。呪術×転生のファンタジー

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『京都くれなゐ荘奇譚(四) 呪いは朱夏に恋う』|白川紺子|PHP文芸文庫

京都くれなゐ荘奇譚(四) 呪いは朱夏に恋う白川紺子(しらかわこうこ)さんの文庫書き下ろし青春ファンタジー小説、『京都くれなゐ荘奇譚(四) 呪いは朱夏に恋う』(PHP文芸文庫)を紹介します。

本書は、「おまえは二十歳まで生きられないよ」と呪いをかけられた少女麻績澪(おみ・みお)が、その運命を変えるために京都で暮らし、邪霊を祓うことを生業とする蠱師(まじないし)を目指す、青春×呪術×転生×ファンタジーの第4弾です。
現代の京都を舞台にした作品で時代小説ではありませんが、前世からの宿縁で結ばれた澪と凪高良(なぎ・たから)の運命が気になり、毎巻、ガイドブックに載らないディープな京都を楽しんで読んでいます。げみさんの表紙装画も気に入っています。

「二十歳まで生きられない」と呪いをかけられた澪を救うには、呪述によって生み出された千年蠱を祓うしかない。しかしそれは、澪が心を寄せる高良の死を意味していた――。呪いだけ解いて、高良を生かす方法を探る澪だが、高良の孤独な姿を見るたび、胸が苦しくなる。そんな澪を心配する兄の漣、護衛役の波鳥は……。澪の相棒である精霊たちも活躍する、人気の呪術幻想譚シリーズ第四弾。

(『京都くれなゐ荘奇譚(四) 呪いは朱夏に恋う』カバー裏の内容紹介より)

その日、澪は蠱師の師匠・麻生田八尋の仕事の手伝いで、口丹波の睦原村に来ていました。五十森という男性から、由緒ある父方の実家に、死んだ祖父の幽霊が出るのでお祓いをしてほしいという依頼で。

八尋が鍵を開け、引き戸を横にすべらせて広い玄関に足を踏み入れると、奥の方から老人が覗いているのが見て取れました。澪はこのとき、焦げ臭いにおいに気づきました。

「いったん外に出ようか」
 なんでもないように八尋が言った。澪がうなずき、体の向きを変えようとしたとき、それまで緩慢だった老人の動きが急に速くなった。床を這ったまま、獲物を見つけたかのように猛然と手脚を動かし、玄関に突進してくる。その異様さに澪は体がすくんだ。
(後略)

(『京都くれなゐ荘奇譚(四) 呪いは朱夏に恋う』P.26より)

八尋が澪の背中を押して外に出し、自身もすばやく出るや否や、引き戸を勢いよく締めました。戸にぶつかる大きな音がしましたが、外には出てこないみたいでした。
八尋らが近所の老人の話を聞くと、五百森の家は株内(丹後・丹波地方で家同士の集まりを株といい、その仲間内を指す)で、村の祀りを仕切っていたが、評判が悪かったと言います。
どうして、老人の幽霊が出るようになったのでしょうか?
八尋は邪霊をひとところにおびき寄せて、一網打尽にする作戦を立てましたが、澪がその邪霊を祓う、つまり神を降ろすことに……。(「みたまのやしろ」より)

「殯宮(もがりのみや)」では、京都と滋賀の境にある皆子山の近くの集落に幽霊が出るという話を澪の兄漣の大学の同級生の日下部出流から聞き、八尋と澪、波鳥、漣、出流の五人はその村へ向かいました。
氏神を祀る神社で、女の幽霊が出ると言います。その幽霊は妊婦に祟るそう。

 照手が座敷をうろうろと歩きまわっている。落ち着かない様子だ。鼻先を上向け、ふんふんとにおいを嗅ぎ、きょろきょろしている。
「照手、どうしたの?」
 声をかけても照手はふり向かず、毛を逆立ててしきりに歩く。澪は立ちあがり、照手のそばに近寄った。開け放した窓から風が吹き込み、軒下に垂らされた葦簀が揺れる。ポニーテールにした澪のうなじに生ぬるい風が触れていった。

(『京都くれなゐ荘奇譚(四) 呪いは朱夏に恋う』P.175より)

照手は、狸の姿をした職神であり、忌部の守り神でもあり、澪を守っていたのでした。
表紙にも描かれていてペットのようにかわいい照手ですが、澪をだれから守っているのでしょうか?

古代から転生を繰り返す「千年蠱」で、現在は高校生の姿をしている高良と、千年蠱の呪いをかけられた「多気女王」が転生した高校生の澪、前世からの宿縁で結ばれた二人。
「二十歳まで生きられない」と言われて育った澪に、「呪いを解きたいなら、俺を殺せ」と迫る高良。
悲しすぎる運命だが、その運命を変えようとする澪は、呪いだけ解いて、高良を生かす方法を探ります……。

今回は。ある蠱師一族が動き出し、澪の身に危険が迫り、呪術×転生のファンタジーは、痛快な京の邪霊退治から新たなステージに入り、面白さが加速していきます。澪と高良の胸が締め付けられるようなせつない恋も描かれていき、キュンキュンします。
このシリーズに若い読者のファンが多いのもうなずけます。

京都くれなゐ荘奇譚(四) 呪いは朱夏に恋う

白川紺子
PHP研究所 PHP文芸文庫
2023年12月21日第1版第1刷発行

装丁:こやまたかこ
装画:げみ

●目次
みたまのやしろ
殯宮
呪いは朱夏に恋う
番外編 虚ろ菊

本文252ページ

文庫書き下ろし

■今回取り上げた本




白川紺子|小説ガイド
白川紺子|しらかわこうこ|小説家 1982年、三重県生まれ。 同志社大学文学部卒業。 2011年、154回Cobalt短編小説新人賞入選。 2012年、「嘘つきな五月女王(メイ・クイーン)」で、2012年度ロマン大賞を受賞し、2013年、同...