病気に負けるな。免疫力を高める、滋養のある江戸料理小説

お江戸やすらぎ飯|鷹井伶

お江戸やすらぎ飯テレビや新聞、ネットで、連日、新型コロナウイルスの感染拡大に関するニュースが大きく報道されています。不安を感じている人も多いのではないでしょうか。

そんな中で、鷹井伶(たかいれい)さんの文庫書き下ろし時代小説、『お江戸やすらぎ飯』(角川文庫)を読みました。

江戸の大火で両親とはぐれ、吉原の遊郭で育てられた佐保。花魁になるための修業を重ねていた彼女には特殊な力があった。水穀の精微――食物から得られる滋養、養生の極意を、うまれつき備えているというのだ。幕府のお抱え医師の名家・多紀家の五男・元堅は、病に効く食材を言い当てる佐保の力を目の当たりにする。やがて、佐保は医学館に預けられ、病人を救う料理人を目指していく……。美味しくて体にいいグルメ時代小説!
(本書カバー裏紹介より)

主人公の佐保は、六歳のときの大火で両親とはぐれて、吉原の遊郭で育てられました。遊女になる定めだった佐保は、ある事件を機に、幕府直轄の「医学館」の督事(館長)を務める医家の多紀家に引き取られて、病の人を救う料理人を目指します。

「あとがきにかえて」で、著者は、執筆の動機を綴っています。

 人はどうして病気になるのだろう。風邪やインフルエンザが流行する時、同じ場所にいても罹る人、罹らない人がいるのはどうしてなのだろう――。

(中略)

 私はある取材で知り合った医師に、この疑問をぶつけました。答えは「免疫力」すなわち、自己防衛する力があるかないかでした。
 
(『お江戸やすらぎ飯』「あとがきにかえて」P.276より)

免疫力は、加齢や生活習慣、食生活により変化します。加齢は防ぎようがないが、生活習慣や食生活は努力すれば改善できるとし、著者は食に重点を置いてこの力を養うことを考えました。なるだけ薬やサプリメントに頼らず、食事により健康な体を作りたい、と考えて出合ったのが、漢方養生だそうです。

執筆にあたって、著者は勉強して、漢方養生指導士の資格を取得されました。

本書では、主人公の佐保が、黒豆や生姜、クコの実、いわし、ニラ、山芋など、薬効のある、食材を使った料理が次々と作り、病気に苦しんだり、体調に悩みを抱えた人たちを癒していきます。

「体が乾く……それとこの食べ物に何の関わりがあるというのです」
 と、今度は稀代が元胤に尋ねた。
「はい。古来、白キクラゲは潤いの元とされていて、身体を内から潤して、肌の衰えも防いでくれます。そうそう、クコの実も肌や目に良く、美人の元です。どちらも楊貴妃が好んだといわれています。

(『お江戸やすらぎ飯』P.149より)

多紀家の台所に初めて立った佐保は、いつもは一汁一菜の箱膳の上に小鉢を添えました。小鉢で八代目・元胤の母稀代は、小鉢を添えた理由を質しました……。

身体に良い食材を使った料理で、周囲の人を元気にしていく佐保の活躍は、理にかなっています。読み味の良い物語で、暗い気分も晴れていきます。

第二作の刊行が待ち遠しい、楽しみなシリーズの誕生です。

●書誌データ
お江戸やすらぎ飯
鷹井伶
KADOKAWA・角川文庫
令和2年1月25日 初版発行
文庫書き下ろし
本文277ページ

カバーイラスト:あわい
カバーデザイン:アルビレオ
編集協力:小説工房シェルパ(細井謙一)
薬膳監修:阿部らら「五彩薬膳」代表

●目次
第一話 廓の少女
第二話 医学館の人たち
第三話 夫婦相和し
第四話 小町娘の憂鬱
あとがきにかえて
佐保の薬膳料理

■Amazon.co.jp
『お江戸やすらぎ飯』(鷹井伶・角川文庫)>

鷹井伶|時代小説ガイド
鷹井伶|たかいれい|時代小説・作家 兵庫県神戸市出身。甲南大学文学部卒。漢方養生指導士。 井上登紀子名義で脚本家として活躍。 ■時代小説SHOW 投稿記事 決戦の舞台は江戸城。将軍を守るために綱重は剣をとる...