謎の呪い師に、化け猫疑惑。鯖猫長屋には騒ぎがいっぱい

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鯖猫長屋ふしぎ草紙(四)田牧大和(たまきやまと)さんの文庫書き下ろし時代小説、『鯖猫長屋ふしぎ草紙(四)』がPHP文芸文庫より刊行されました。
美猫のサバが活躍することで大人気の、大江戸謎解き人情話シリーズの第4弾です。

本書の主人公は、猫ばかり描いている売れない画描きの青井亭拾楽と、その飼い猫のサバです。

美猫サバが暮らす「鯖猫長屋」で、利助・おきねの夫婦が大喧嘩。その裏に怪しげな呪い師(まじないし)の影が……。
そんな折、サバの妹分さくらに化け猫疑惑が持ち上がる。続けて起きた「赤子の顔の傷」事件や、とある大店の内儀の死も、化け猫の仕業だというのだ。
さくらの疑いを晴らそうと、飼い主の拾楽が動き出すが、サバには気になることがあるようで……。

 三十歳を随分と過ぎた独り身の男で、生白い瓜実顔に、下がり気味の糸目、女のような紅い唇は上も薄く、髪はは総髪を首のあたりでひとくくりにしただけ。いまひとつ、しゃっきりしない見た目の男だ。

(『鯖猫長屋ふしぎ草紙(四)』P.14より)

こんな冴えない外見ですが、かつては「黒ひょっとこ」と呼ばれる一人働きの元盗賊でした。
サバは、大層珍しい、雄の三毛猫。二年前に、永代橋が落ちた騒動の際に、永代橋を越えた先の祭に行こうとした長屋の住人を、サバが止めたことをきっかけに、長屋で一番偉い存在となり、威張っています。

どちらが主従がわからない、というより、サバが主人で拾楽は子分で、サバにあごで使われることなります。

 艶やかな縞三毛の毛並みは、白はどこまでも白く、茶は鮮やか、とりわけ青みがかった鯖縞柄が美しい。
 きりりとした顔立ち、しなやかな足と胴、団子のような短い尾。どこをとっても、殿様姫様の飼い猫もかくや、というほどの美猫なのである。

(『鯖猫長屋ふしぎ草紙(四)』P.15より)

そんな拾楽とサバが暮らす、根津宮永町の「鯖猫長屋」で騒動が起こります。

居酒屋の雇われ料理人の利助とおきねの夫婦が大喧嘩の末に、おきねが利助の商売道具の柳刃包丁を持ち出します。長屋を仕切るお節介な住人おてると一緒に仲裁に入った拾楽は、利助が利き腕を怪我した兄弟子のために夫婦で貯めたお金を持ち出したことを知ります。そして、その金子は怪しい呪い師に渡ったとのこと……。

 さくらは雌の縞三毛で、サバの妹分として日々すくすくと育っている、生まれて四月ほどの子猫。
 幼いからか、そういう性分なのか――拾楽は、多分後者だと踏んでいる――、とにかくお転婆で、目が離せない。

(『鯖猫長屋ふしぎ草紙(四)』P.18より)

一方、拾楽、サバと一緒に暮らすさくらに、猫又(化け猫)疑惑が持ち上がります。
悪さをしているのは、生まれつき妖の力を持った子猫で、猫又になりたいために、赤子の生気を吸って回っていて、顔に傷をつけられた赤子は皆、その子猫にやられたと、読売に書かれました。
根津権現門前の大店の内儀の死も、子猫さくらのせいと噂され、町方同心まで登場する事態に……。

そして、不思議な力を有し、熱心な信者をもつ、呪い師・柳斎が拾楽とサバの前に登場します。

本書の魅力は、ちょっと不思議な事件を謎解きする面白さに加えて、美猫サバとさくらの愛らしさあります。
サバを中心に、風変わりな長屋の住人たちが繰り広げる珍騒動も楽しく、人情話に癒されます。

◎書誌データ
『鯖猫長屋ふしぎ草紙(四)』
著者:田牧大和
出版:PHP研究所・PHP文芸文庫
第1版第1刷発行:2018年3月22日
760円+税
331ページ

装丁:泉沢光雄
装画:丹地陽子

●目次
其の一 包丁騒動
其の二 猫又志願
其の三 磯の鮑
其の四 新たな子分

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『鯖猫長屋ふしぎ草紙』(田牧大和・PHP文芸文庫)(第1作)
『鯖猫長屋ふしぎ草紙(四)』(田牧大和・PHP文芸文庫)