京は燃えているか? 長谷川平蔵父子が火付殺人犯を追う

鬼煙管 羽州ぼろ鳶組今村翔吾さんの文庫書き下ろし時代小説、『鬼煙管 羽州ぼろ鳶組』が祥伝社文庫から刊行されました。

彗星のように現れて、時代小説ファンの圧倒的な支持を集める、「羽州ぼろ鳶組」シリーズの第4作です。
当「時代小説SHOW」でも2017年度の文庫書き下ろしベストの第1位に推しました。

「人も同じ、身分は違えども煙草の銘柄ほどのもの」煙管の吸い口を見つめ、平蔵は人の儚き生を思い、正義と悪との境を憂えていた……。
京都西町奉行長谷川平蔵は、火を用いた奇っ怪な連続殺人を止めるため、最も頼りにする江戸の火消、松永源吾を京に呼ぶ。源吾は平蔵の息子・銕三郎と真相に迫るが、やがて銕三郎が暴走し……。

本書では物語の舞台を、長谷川平蔵宣雄が京都西町奉行として赴任している京都に移し、新たに趣向を凝らしています。
深い信頼関係で結ばれている平蔵の窮地を救うために、羽州新庄藩定火消頭取・松永源吾は、配下の加持星十郎、熟練の火消・武蔵とともに、京都へ向かいます。
この人選が絶妙です。

京都では、水の張った大桶の中で手と足を縛られた溺死体で見つかる怪奇な殺人事件が連続して発生し、巷では物の怪「青坊主」の仕業ではないかと言い出されていました。

青坊主事件が終息しない一方で、今度は葬式の最中に遺体から煙が上がり、火を噴いて燃え上がり火事に至る事件が連続して起こります。
京の火消はなすすべなく手をこまねくばかり。民は「妖怪火車」と呼んび恐慌に陥っていました。

在京の火消は四家ありながらも、田沼意次の政敵・一橋卿の影響を強く受ける京都所司代の管轄で協力を得られず、平蔵は孤立無援、絶体絶命の窮地に……。

京に上った源吾らの前に現れたのが、平蔵の息子・銕三郎。そう、「本所の銕」と呼ばれた頃の鬼平(宣以)です。
平蔵が大きな信頼を寄せて高く買う源吾の存在が気に喰わない、銕三郎は事あるごとに源吾に反発します。その若さが何とも眩しいです。

「人も同じ、身分は違えども煙草の銘柄ほどのもの。最後は煙に変じて灰になる。雁首で燃え、吸い口で消える。この羅宇をどのように潜って生きるか。詰まるところ人生とはそのようなものではないか」
 平蔵は吸い口をじっと見つめた。ちろりと煙が零れ、筋になって昇って消えた。その姿がいつになく儚げで、源吾は妙な胸騒ぎを覚えた。
 
(『鬼煙管 羽州ぼろ鳶組』P.258より)

煙管を愛好する平蔵(宣雄)の話は、『鬼平犯科帳』の「大川の隠居」(第6巻に収録)にも描かれています。

そして、青坊主、火車、洛中を震撼させる怪異の数々、何者かが仕掛けたものなのか……。

京の町を襲う炎の中で、配下の火消組を繰り出せない源吾の前に、常火消淀藩火消頭取・野条弾馬が登場します。個性的なキャラクターの火消で、物語のアクセントになっています。

平蔵父子と源吾らは京の町を救えるのか?
ハラハラドキドキの連続のストーリーに胸が高鳴る一冊です。

◎書誌データ
『鬼煙管 羽州ぼろ鳶組』
著者:今村翔吾
祥伝社・祥伝社文庫
初版第1刷:2018年2月20日
ISBN978-4-396-34397-2
本体700円+税

カバーデザイン:芦澤泰偉
カバーイラスト:北村さゆり
399ページ

●目次
第一章 火車
第二章 本所の銕
第三章 湧く焔
第四章 宵山
第五章 あの日の竜吐水
第六章 京都怪炎
第七章 隠れ鬼
終章
解説・北上次郎

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『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』(今村翔吾・祥伝社文庫)第1作
『鬼煙管 羽州ぼろ鳶組』(今村翔吾・祥伝社文庫)

『決定版 鬼平犯科帳 (6)』(池波正太郎・文春文庫)