『傑作! 名手たちが描いた 小説・鎌倉殿の世界』の解題を担当しました。

雪 古九谷

雪 古九谷雪 古九谷
(ゆき・こくたに)
高田宏
(たかだひろし)
[芸道]
★★★★☆

作者は、九谷焼のふるさと、石川県大聖寺(だいしょうじ)出身。九谷焼の制作秘話に迫る異色の時代小説。
ぜんぜん焼きもののことはわからないのだが、面白く読めた。読後には、金沢の県立美術館へ「古九谷(こくたに)」を見に行きたくなったほどである。

「古九谷」は、江戸初期の短期間、加賀国大聖寺藩で制作され、突然消えてしまった、幻の彩色磁器である。あとがきによると、金沢の石川県立美術館で、古九谷の名作数点を見たときに作者は、大きな衝撃を受けたと述べている。その後、有田をはじめ各地の窯や窯跡を見てまわり、自分で土をこねてみたり、あちこちの美術館が所蔵する古九谷を見に出かけたり、加賀藩や大聖寺藩の史料を読み、美術史勉強し、旧九谷村周辺を歩き回った末に、生まれた快作である。

古九谷の絵付師像と、その背後の大聖寺藩像など、なんとも興味深い物語となっている。

タイトルは、「雪」のあとにスペースを入れるのが正しいのだろうか? それとも空きスペースなしで、「古九谷」と続けたほうがいいのだろうか? 統一されてないので困った。

物語●寛永十六年、加賀藩三代藩主前田利常が四十七歳の若さで隠居し、長男光高に加賀藩八十万石を継がせ、次男利次に富山藩十万石、三男利治に大聖寺藩七万石を興させた。こうして生まれた前田家の支藩・大聖寺藩は、加賀の南はずれ、江沼郡一円を領し、大聖寺(現在の加賀市)に藩邸を定めた。藩主・利治公の命で山中の村・九谷に窯場が造られ、後藤才次郎を窯場奉行に、天下一の焼きものづくりが始まる…。地元の若者で才次郎に目をかけられる太吉、その恋人おりん、おばば、焼きもの場の細工頭、田村権左右衛門、窯場の男・鉄蔵など、九谷の磁器作りに情熱を傾けた人たちの物語。

目次■第一章 雪の夜の九谷村/第二章 加賀三代藩主前田利常/第三章 九谷窯場奉行後藤才次郎/第四章 花ふぶきの九谷村/第五章 金掘り切支丹磔刑/第六章 大聖寺藩七万石城下/第七章 山桜散華図大平鉢/第八章 蝉しぐれの九谷村/第九章 後藤才次郎忠清帰藩/第十章 絵師久隅守景/第十一章 みぞれ降る九谷村/第十ニ章 裸女幻舞図大平鉢/第十三章 春遅い九谷村/あとがき/解説 新井満

カバー装画・装丁:西のぼる
解説:新井満
時代:寛文二年(1662)早春
場所:大聖寺、九谷村、山中村
(学陽書房人物文庫・700円・01/02/20第1刷・253P)
購入日:01/02/18
読破日:01/03/03

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