お江戸でござる

お江戸でござるお江戸でござる

(おえどでござる)

杉浦日向子

(すぎうらひなこ)
[江戸入門]
おすすめ度:★★★★☆

NHK「コメディーお江戸でござる」で江戸の案内人を務めていた著者の話をテーマ別にまとめた読み物である。浮世絵を現代の【テレビ】にたとえたり、花魁を現代の【銀幕の大スター】になぞらえたりして、楽しくわかりやすく江戸が理解できる。

久々に、杉浦ワールドを満喫できるが、今は亡き著者のことを思うとちょっと切ない気分になる。杉浦さんは、江戸好きにしてくれた恩人であるが、また、蕎麦好きにしてくれた恩人でもある。

『お江戸でござる』の中にも「蕎麦」に関する項がある。蕎麦屋のメニューにある、「あられ」「花まき」「しっぽく」「おかめ」について紹介している。

断片的だった江戸の知識がだいぶ整理でき、説明の一つ一つが頭にすっと入ってきた。今回、なるほどと思ったのは、お化けと幽霊の違いの解説である。

引用:
 かちかちと拍子木が鳴って、何事かと辰五郎が戸外を覗いた。
 実は、「お化け」と「幽霊」には、きちんとした区別があります。
「幽霊」は、想う相手がいて、その人を目指して出ます。民谷伊右衛門をどこまでも追って行く、『四谷怪談』の「お岩さん」はこちらです。
「お化け」は、その土地や物に憑くもので、地縛霊に近く、誰が通っても出るものです。井戸にしか出てこられない『皿屋敷伝説』の「お菊さん」はこれにあたります。

…<中略>…

 お化けには、変化するものとしないものがあります。狐、狸、雪女、ろくろ首が普段人や獣のなりをしていて他のものに変わるのに対して、河童、天狗、ぬらりひょん、砂かけばばあなどは、常に同じ格好で出てきます。これらをお化けと区別して「妖怪」と呼びます。
(『お江戸でござる』P.182より)

杉浦さんの江戸入門ガイドブックは、いずれも江戸への愛にあふれている。人情味豊かで、物を大切にする、ストレス社会とは縁遠い江戸の庶民の生活が生き生きと描かれている。本を読んでいる間、われわれはそのユートピアのような江戸にいることができる。

目次■はじめに|第壱章 私たちの文化と江戸の文化(瓦版―現代の【大衆雑誌】/浮世絵―現代の【テレビ】/番付―現代の【ランキング】/髪飾り・煙草入れ―現代の【アクセサリー】/舶来品―現代の【インポート物】/花魁―現代の【銀幕の大スター】/呉服屋―現代の【デパート】/祭り―現代の【イベント】/口上―現代の【コマーシャル】/戯作者―現代の【作家】/貸本屋―現代の【レンタルビデオショップ】/看板娘―現代の【イメージガール】/浮世床・髪結い―現代の【ヘアサロン】/元禄―現代の【バブル】/料理茶屋・屋台―現代の【グルメ】)|杉浦日向子の江戸こぼれ話・壱|第弐章 今も残っている江戸の風景(花火/朝顔/相撲/職人/蕎麦/宮大工/花見/舟遊び/焼き物/剣道/講談/寄席/俳句/豆腐)|杉浦日向子の江戸こぼれ話・弐|第参章 私たちの暮らしと江戸の暮らし(駕籠―現代の【タクシー】/岡っ引き・御用聞き―現代の【防犯組織】/損料屋―現代の【レンタルショップ】/奉公人―現代の【ビジネスマン】/口入れ屋―現代の【人材斡旋業】/富くじ―現代の【宝くじ】/おきゃん―現代の【ボーイッシュ・ギャル】/薬売り―現代の【セールスマン】/火消し―現代の【消防】/水上交通―現代の【高速道路】/かかあ天下―現代の【ウーマンズパワー】)|杉浦日向子の江戸こぼれ話・参|第四章 これぞ、「お江戸」でござる(お化け・幽霊/お地蔵さん/狸・狐/虫/河童/月見/武士)|杉浦日向子の江戸こぼれ話・四|第伍章 よみがえらせたい江戸の知恵(リサイクル/大家の活躍/森林資源の利用法/ボランティア)|杉浦日向子の江戸こぼれ話・伍|第六章 江戸はこんなに進んでいた(水道/学校/旅行/花)|杉浦日向子の江戸こぼれ話・六|おわりに|解説 石川英輔

カバー装画:杉浦日向子
解説:石川英輔
(新潮文庫・476円・288P)

購入日:2006/09/13
読破日:2006/09/14

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