東京新大橋雨中図

東京新大橋雨中図
東京新大橋雨中図
(とうけいしんおおはしうちゅうず)
杉本章子
(すぎもとあきこ)
[芸道]
★★★★☆☆

第100回直木賞受賞作。探しに探してようやく購入した一冊。期待を裏切らない名作だった。

主人公は、明治初期に活躍した、最後の大物木版浮世絵師の小林清親。以前、高橋克彦さんの「浮世絵鑑賞事典」(講談社文庫)等で、かすかに名前を記憶していた。読了後、同書に再び目を通すが、掲載されていた「東京新大橋雨中図」はモノクロだったので、ちょっと残念。この清親の西洋風浮世絵は、光線画と名づけられ、VIEW OF RAIN FALL ON SHIN-OU-HASHI IN TO-KEIと英文名も付けられていた。明治初頭、東京はとうけいと呼んでいた。本作品名もとうけいしんおおはしうちゅうず、というべきか。

各章のタイトルは、すべて清親の代表作の名前が付けられている。清親の生涯と作品創出の内側、当時の風俗が、彼の光線画のようにしみじみとした味わいをもって浮き上がってくる。清親のはもちろん、本編に登場する作家たち(芳年、河鍋暁斎、井上安治、芳幾)の画がとても見たくなった。

物語●本所御蔵屋敷御勘定掛だった小林清親は、維新によって、徳川十六代家達の住む駿府へ移るが、母を抱えてはとても食っていけない。撃剣興行に身を投じ、やがて母を伴って江戸へ戻る。江戸育ちの母子は、東京に名前が変わったが江戸が恋しくてならなかったのだ…。

目次■新橋ステンション夕景/東京新大橋雨中図/根津神社秋色/浅草寺乃市/解説・田辺聖子

カバー:宇野亜喜良
解説:田辺聖子
時代:慶応四年(1868)
(文春文庫・466円・91/11/10発行)
購入日:97/5/31
読破日:97/6/25

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