酔いどれ小籐次留書 孫六兼元

酔いどれ小籐次留書 孫六兼元酔いどれ小籐次留書 孫六兼元

(よいどれことうじとめがき・まごろくかねもと)

佐伯泰英

(さえきやすひで)
[剣豪]
★★★★

来島水軍流剣法の達人で、元豊後森藩藩士・赤目小籐次(あかめこうとうじ)が活躍する、シリーズ第5弾。名刀孫六兼元を手に入れ、さらなる小籐次の剣が冴える。

佐伯泰英さんの「酔いどれ小籐次留書」シリーズの第5弾『孫六兼元(まごろくかねもと)』を読み終えた。旧主久留島通嘉の恥辱を晴らすために、四藩を相手に「御鑓拝借」をなして、江都の話題をさらった元豊後森藩士の赤目小籐次の活躍を描く人気シリーズ。 今回は、小籐次が芝神明社の大宮司の危難を解決し、その謝礼として美濃鍛冶の関の孫六初代の鍛えた太刀・兼元を譲られるところがポイントで、題名にもなっている。物語の中でこの名刀について、次のように描写されている。

 この孫六兼元は見事な板目肌であった。鍛え上げられた刀身には土取りをして焼入れが行なわれた。この焼入れによって多彩な文様が生み出されるが、これは刃文という。
 互(ぐ)の目垣のように一定の間合いを持ち、整然とした乱れ刃が出来上がることがある。これを互の目の刃文という。互の目に乱れた刃文の先端が尖ったものを尖り互の目というが、尖り互の目が三つずつ組になって刃文を作るものを、
「三本杉」
 と呼称した。
 関の孫六系の焼き刃に多い特徴だ。
 小籐次の手にする孫六兼元にはこの三本杉が見事に描写されていたが、長年手入れが行なわれなったとみえて、曇っていた。

扶持を離れた小籐次が生計(たつき)のためにやっているのが、町を回っての刃物研ぎ。来島水軍流の剣の技ばかりでなく、研ぎの技術もすばらしい。剣士としても、研ぎ師としても一流の小籐次が名刀を手に入れ、今まで以上に刀を研ぐ様子が詳細に描かれていて面白かった。小籐次の愛刀は、備中の刀鍛冶次直が鍛えた二尺一寸三分の太刀であるが、それに加えて名刀を入手し、今後のさらなる活躍ぶりを期待したい。

刀匠の関の孫六が登場する時代小説としては、宮本昌孝さんの傑作『ふたり道三』が思い出される。

ブログ◆
2006-02-25 室町の名刀・関の孫六兼元

物語●赤目小籐次は、紙問屋久慈屋の大番頭の観右衛門に紹介されて、芝神明社の大宮司西東正継に降りかかった危難を救うことになった。芝神明の社殿の前で、派手な友禅に白塗りに紅を差した若い男が喉元を細身の剣で刺されて死んでいた。男は境内にある陰間茶屋の小供と呼ばれる男娼で、凶器の剣は神明社の宝剣・雨斬丸だったが、何者かによって持ち去られていた……。

目次■第一章 宝剣雨斬丸/第二章 裏長屋の国光/第三章 麹町の小太刀娘/第四章 奇芸荒波崩し/第五章 琵琶滝の研ぎ場

カバーフォト:広瀬唯二
カバーデザイン:多田和博

時代:文化十五年(1818)桜のころ

(幻冬舎文庫・571円・06/02/10第1刷・317P)
購入日:06/02/20
読破日:06/02/25

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