江戸城御金蔵破り

江戸城御金蔵破り

(えどじょうごきんぞうやぶり)

黒崎裕一郎

(くろさきゆういちろう)
[ピカレスク]
★★★★

『はぐれ柳生』シリーズや、中村勝行名義で著作した、『蘭と狗』で時代小説大賞を受賞した、黒崎裕一郎さんの最新文庫作品。幕末の江戸城の御金蔵破りというのがスケールが大きくて、ワクワクしながら読めそう。

いきなり、市中引廻しの刑の場面から物語は始まる。厳重な警備の江戸城に忍び込み、御金蔵を破って、四千両を盗み出した、前代未聞の大泥棒、野州犬塚村無宿富蔵と藤岡藤十郎の処刑である。引廻しの馬上の藤十郎は、腹の中で昂然とつぶやく「おれが盗んだのは四千両の金子ではない。徳川の城を盗んだのだ」。

意外な展開でちょっと驚くが、二人がいかにして、江戸城の御金蔵を破ったのか気になり、一気に読み進める。算学者を目指しながら、放蕩の末に、道を誤ってしまう主人公の藤十郎には、なかなか共感を覚えにくいところがある。一種のピカレスク小説だから、あまり思い入れが深くなっても困るわけだが…。

ひねりが利いているのは、田安家の家臣(といっても、二十五両で株を買った御小人であるが)ながら、尊皇派の武市半平太や坂本龍馬、桂小五郎と交遊を結ぶという設定。御小人とは、主君の外出時の警備や、諸役人の供をする役目をいい、俸禄は十五俵一人扶持である。

物語●ペリー提督ひきいる四隻のアメリカ東インド艦隊が開国を求める国書をたずさえて、突如、浦賀沖に来航してから五カ月。江戸城(徳川幕府)の威光に翳りが見えはじめた頃。田安家の御小人(おこびと)藤岡藤十郎は、役目を終えた後、おでんの振り売りという夜のアルバイトをしていた。黒船騒ぎが起きてから、おでんの担ぎ屋台の売上も減り、今後の身の振り方を考え始めた。下野都賀郡の郷士の三男に生まれた藤十郎は、算勘に明るい母の影響を受けて、算学家(数学者)を目指して、二十六歳の時に家を出た。しかし、親元を離れて宇都宮で修業を始めるが、酒と女で身を持ち崩し、放蕩三昧の日々を送るようになった。やがて算学の教授をしながら江戸に出た藤十郎は、同郷の出身で口入れ屋で働く富蔵と知り合い、田安家の御小人株を買って、侍になることになった…。

目次■序章/第一章 流浪/第二章 品川狂躁/第三章 黒船再来/第四章 爆発連鎖/第五章 本丸惣絵図/第六章 拮橋門/第七章 革舟/第八章 忍び込み/終章|黒崎裕一郎 著作リスト

カバーイラスト:宇野信哉
カバーデザイン:百足屋ユウコ
時代:嘉永六年(1853)十一月
場所:南伝馬町三丁目、九段坂、日本橋駿河町、宇都宮、倉賀野、高崎、藤岡、江戸麹町三丁目、吉原、狩野新道、日本橋元大工町、品川本宿、日陰町、板橋ほか
(徳間文庫・629円・04/09/15第1刷・408P)
購入日:04/09/15
読破日:04/09/15

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