(こちょうのけん)
(こうづまひでき)
[剣豪]
★★★★
♪第11回歴史群像大賞受賞作。作者は1955年、宮崎市生まれで、宮崎県内で高校の教員として倫理・政経を担当する。四十六歳のときに、県下の進学校で歴史科目を担当することになり、一日一冊の歴史関係書を読破するようになり、歴史小説の執筆の契機となる。本作品がデビュー作。主人公の森本右近太夫一房(もりもとうこんのたいふかずふさ)は、時代小説のヒーローでは珍しいタイ捨流(作中では体捨流の表記)の剣豪。一房は、加藤清正の家臣、森本儀太夫(実在の人物で司馬遼太郎さんの『功名が辻』にも一瞬登場する)の庶子。
裏柳生との戦いというと、隆慶一郎さんの『影武者徳川家康』『捨て童子松平忠輝』などを思い出すが、一房の剣の冴えも『吉原御免状』松永誠一郎に通じるものを感じる。誠一郎は、師の宮本武蔵ゆずりの二天一流だが、一房もタイ捨流から二刀を自在に遣う体捨二刀流を確立していく。
ブログ◆
2006-03-08 裏柳生が登場する時代小説
2006-03-07 歴史群像大賞と時代小説の賞
2006-03-06 タイ捨流の剣豪ヒーロー登場
物語●主人公のタイ捨流の剣豪・森本一房の前に、柳生宗矩の命を受けた柳生五郎右衛門宗俊(石舟斎の四男の柳生五郎右衛門宗章ではない)が率いる裏柳生が立ちはだかる。時は、慶長十五年三月、豊臣秀頼が伏見にて徳川家康と会見することになった。
豊臣家の滅亡と秀吉恩顧の大名取り潰しを考える将軍秀忠。その手足として働く宗矩が柳生一門と伊賀忍者の手だれを集めて作り出した諜報暗殺組織が裏柳生。肥後藩主加藤清正は秀頼の護衛に一命を懸け、一房も清正の近侍の一人として万一に備えることに……。
目次■第一章 雌伏/第二章 試練/第三章 雄飛/第四章 流転/第五章 廻国/第六章 別離