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裏表忠臣蔵

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裏表忠臣蔵
裏表忠臣蔵
(うらおもてちゅうしんぐら)
小林信彦
(こばやしのぶひこ)
[忠臣蔵]
★★★★ [再読]

NHK大河ドラマ「元禄繚乱」のおかげで、新潮文庫から刊行され絶版になっていた、本書が文春文庫より装いも新たに発行された。半永久的に読めないと諦めていた作品が読めるようになることはありがたい。最近では、文庫本は大量に流通させるものという認識が出版社側にあるようで、売れない本は、再版されにくくなっている。そのため、発売時に買い逃すと、後で欲しいと思っても手に入れることが難しい。

小林信彦さんは、時代小説にハマる以前、とくに学生のころ、とても影響を受けた作家で、この人に、推理小説の読み方やパロディーの味わい方、喜劇(マルクス兄弟など)の見方を教わったようなもの。この作品も発売当時、パロディーという位置付けで読んでいた。目次の「ビッグ・シティ、ブライト・ライツ」は、その当時流行ったジェイ・マキナニーという青春小説(翻訳は高橋源一郎さん)のパクリである。

グレゴール・ザムザに起こったことが吉良上野介義央にも起こった。ザムザの変身譚を信じられぬ人は、この物語も信じられないだろう。

という始まりは、普通の時代小説家には絶対書けないものだが、この作品のテーマを見事に象徴している。元朝日新聞の記者で、演劇評論家の扇田さんが、解説を務めているが興味深かった。

◆主な登場人物
吉良上野介義央:高家筆頭
大石内蔵助:赤穂藩国家老
大野九郎兵衛:赤穂藩家老
原惣右衛門:足軽頭
竹屋源兵衛:米沢町の菓子商
源太郎:源兵衛の息子
色部又四郎:上杉家江戸家老主席
堀部安兵衛:赤穂藩士
杉森信盛:歌舞伎・浄瑠璃狂言作者・近松門左衛門
柳沢出羽守保明:幕府の実力者
お美乃:源太郎の恋人。京女
お軽:内蔵助の妾
宝井其角:俳諧師で源太郎の師

物語●浅野内匠頭が、江戸城中で吉良上野介に斬りかけたことから始まった、浅野事件。この事件は、西国の小さな町赤穂に大きな衝撃をもたらしたが、両国米沢町の菓子商竹屋の息子・源太郎にも影響を与えることになる…。京へ菓子の道の修業に出ることになっていた源太郎に、竹屋の出入りの上杉家江戸家老・色部又四郎から赤穂の様子を探るように命じられたのだ。

目次■序章 最初の事件/第一章 小さな町の大きな衝撃/第二章 吉良荘/第三章 商人失格/第四章 鏡の国/第五章 東と西/第六章 ビッグ・シティ、ブライト・ライツ/第七章 存在の耐えられない軽さ/第八章 江戸の向う側/第九章 追いつめられて/第十章 揺れる男/第十一章 幕間狂言/第十二章 虐殺 またはスラップスティック/第十三章 事件の始末/終章 ことの次第/作者ノート/文春文庫のためのあとがき/解説 扇田昭彦

カバー:原田維夫
解説:扇田昭彦
時代:元禄十四年(1701)三月十四日
場所:江戸城、赤穂、両国矢之倉米沢町、日比谷桜田、京、本所一ツ目
(文春文庫・419円・98/08/10第1刷・221P)
購入日:98/08/05
読破日:98/08/08

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