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江戸の見世物

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江戸の見世物

(えどのみせもの)

川添裕

(かわぞえゆう)
[江戸入門]

江戸を代表する娯楽、見世物の世界を多数の図版で紹介し、興味深い一冊。著者は見世物文化研究所代表。

学生の頃、「親の因果が子に報い~」とだみ声で蛇娘の口上を語ることを特技にしていた、先輩がいた。なんでも、なぎら健壱さんのものまねらしい。いままで、「見世物」と聞くと、実際に見たことがなかったので、その記憶と暗く猥雑な負のイメージしかなかった。本書を読んで、そいうった先入観が一掃された。

多数の図版(ほとんどが当時の錦絵)を紹介しながら、わかりやすい筆致で、江戸時代の見世物について紹介してゆく。籠細工などの細工物、珍奇な舶来動物、軽業、生人形という、当時を代表する見世物のジャンル別に、そのなりたちや当時の人々の受け止め方、経済効果などを見せてくれる。見世物が歌舞伎をもしのぐ、当時を代表するエンターテインメントであったことがよくわかった。

学究畑というよりは、編集者経験があり、見世物に関係する人たちの近くにいる人ならではの、楽しめる研究書である。

読みどころ●江戸時代後期の見世物の姿を、多数の文献(一次資料)や、錦絵などの図版を交えて、わかりやすく紹介する。当時の人たちが何を喜んで歓喜の声をあげ、見世物小屋につめかけたか、それが時代や社会とどんな関係をもっていたかが浮き彫りになる。「見世物は都市庶民の最大の娯楽であり、流行しだすと、江戸っ子の三分の一から半分近くがどっと押し寄せる現象が何度も起こっている」(p218)ぐらいの、社会への大きな影響力をもっていたという、その世界をちょっとのぞいてみよう…。

目次■いざ、江戸の見世物遊歴へ――まえがきに代えて(遊歴の隠居/見世物三昧の一日/ご開帳と細工見世物/見世物好きの棟梁)|第一章 浅草奥山の籠細工(巨大な小屋の、巨大な関羽/見物の声の動揺/口上話芸/見世物をめぐる金銭/ニ、三人にひとりが見物/見世物の経済効果/金主による奉納/見世物の娯楽イメージ/歌舞伎での当て込み/浮世絵と噺本/伊勢へ)|第二章 奇妙な細工の楽しみ(歴史にのこる大ブーム/細工の実験場/職人の王国/大坂下り/浪花の一田庄七郎/釈迦涅槃像/古今未曾有の大当たり/仏教の見世物化/とんだ霊宝/見立絵本の系譜/つくりもの文化)|第三章 珍しい動物(名号牛の眼福/見世物になった舶来動物/ご利益のパターン/ラクダがやってきた/さまざまな情報と風聞/盛りだくさんのご利益/お札としての見世物絵/おしどり夫婦/『和合駱駝之世界』/和合ラクダ神の画幅/ラクダ七福神/その後の動物見世物)|第四章 軽業のよろこび(安政の世へ/早竹虎吉/江戸初お目見得/高小屋のあやうき芸/早竹源氏の旗指物/伝統演目の見世物化/アクロバットと物語の重奏/衣装と道具のスペクタクル/騒々しいほどのお囃子/「早」の字のひとびと/軽業師の海外渡航/アメリカの早竹虎吉)|第五章 生人形の想像力(幕末の新機軸/肥後熊本、松本喜三郎/鎮西八郎島廻り/当初のためらい/浅草初興行をとりまく状況/安政三年の爆発的流行/豪華なバラエティ/遊女の肌/生人形の人肌路線/黛人形の「当代性」/災厄が襲う/小糸・佐七の顔/見世物小屋の土地感覚/浅茅ヶ原一ツ家/想像力の渦巻)|お名残口上――むすびに代えて(川をさかのぼる旅/江戸の見世物と、現代の「見世物」/新種の見世物/押しとどめようがないもの/何の活性化か)|主要参考資料

時代:文政三年(1820)、春から夏
場所:浅草奥山、大坂四天王寺西門、西両国、サンフランシスコ、中国華北省呉橋、横浜弘明寺ほか
(岩波新書・700円・00/07/19第1刷・246P)
購入日:00/07/22
読破日:00/08/30

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