人斬り半次郎 賊将編
(ひとぎりはんじろう・ぞくしょうへん)
池波正太郎
(いけなみしょうたろう)
[明治]
★★★☆☆
♪角川文庫からも1972年に刊行されている。影山さんの解説によると、「人斬り半次郎」は、もともと、新国劇の脚本として辰巳柳太郎さんのために書かれ、短編『賊将』(新潮文庫『賊将』収録)として発表された。その後、桐野の京都で活躍していた時代=人斬り半次郎と呼ばれていた時代を描きたくて、長篇の『人斬り半次郎』が生まれたという。エピソード1といったところか。
作者の筆が、桐野ばかりでなく、西郷にもかなり当てられているのが意外な感もする。おそらく、池波さんの描いている西郷像が一般的な人のイメージに沿ったものだと思えるが、それにしても、西郷というのは描きにくい難しい人物だなあ。単純明快型の桐野と好対照である。
『人斬り半次郎』は、幕末編と賊将編に分かれているが、便宜上分けているのに過ぎず、上下巻とみた方が、作品を理解しやすい。桐野に仕える女中・おまきが、池波さんの曾祖母にヒントを得ているようで、何やらうれしくなった。ともかく、池波作品の面白さは、歴史小説より時代小説にあることを感じさせる一編でもある。
物語●中村半次郎は西郷の腹心として、存分に働き、維新は成った。薩長を中心とした明治政府のもとで、半次郎は桐野利秋と改名し、日本初代の陸軍少将となった。フランス風の軍服を身につけ、金銀をちりばめた特別製の軍刀を腰につるし、ザンギリ頭にフランス香水をつけ、馬丁にひかせた栗毛の駿馬にまたがり、得意の絶頂にあった。が、西郷は次々と改革を急ぐ新政府のやり口に苦りきっていた…。
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