獅子の座 足利義満伝

獅子の座 足利義満伝
獅子の座 足利義満伝
(ししのざ・あしかがよしみつでん)
平岩弓枝
(ひらいわゆみえ)
[室町]
★★★★☆☆

通勤用の本を忘れて活字中毒の禁断症状が出て、昼休みに、勤務先の町で本屋さんを探したが駅から少し離れた書店は廃業していた。都内では信じられないことだが、E駅には、文庫本を置いている書店が一軒もない。帰路の乗換駅で途中下車して、駅前の小さなブックストアでGetしたのがこの本。平岩さんはお気に入りの作家の一人だが、室町時代の偉い人の評伝ということで、買う機会を逸していた作品である。

足利三代将軍義満というと、金閣寺をつくり、世阿弥を贔屓にしたという派手な面と、明との貿易を行い、室町幕府を盤石なものにしたという教科書に載っているような偉い人というイメージ、天皇家に代わろうとしたという疑惑が思い浮かぶ。ただ、全体として人間らしさが感じられずに、ちょっととっつきにくい印象があった。アニメの『一休さん』は例外として。

平岩さんは、日本史の中で巨人ともいうべきこの人物を血の通った一個の人間としてドラマティックに描いている。華やかな栄光の陰にある孤独を浮き掘りにした傑作。物語の前半は、乳人・細川玉子に丹精こめて慈しみ育てられる若き日の足利義満を描く青春編といったところか。後半は、壮大な誰もなしえなかった夢に向かう将軍義満の姿がスケール大きく描かれていて面白い。関白二条良基の甥で、足利義満の猷子となり、仏教界の第一人者となる三宝院満済(まんさい)に関心をもった。

読後、義満の姿と織田信長がオーバーラップしてきた。中世から近世における天皇の存在というものはどういうものだったのか思い至ることが少しできた。なぜ、幕末に足利三代将軍の木像梟首事件が起こったのかもわかった。

物語●延文三年八月、二代将軍足利義詮の側室紀良子が男児を産んだ。義詮の嫡男、後の三代将軍・足利義満である。春王と名付けられた若君に、初代将軍足利尊氏の正室赤橋登子の発案で、乳人(めのと)が付けられた。阿波・伊予守護で、足利家の重臣細川頼之の妻で、侍従持明院藤原保世の娘・玉子であった。玉子は十九歳の新妻で、十日ばかり前に男児を死産したばかりで、その衝撃は大きかった。玉子が乳人に召された翌日、新妻を若君に奪われる結果になった夫の細川頼之は中国路に出陣した。春王(足利義満)は、乳人の細川玉子の丹精によって順調に育ったが両親との縁は甚だ薄かった…。

目次■青龍の章(その一/その二/その三/その四/その五/その六)|朱雀の章(その一/その二/その三/その四/その五/その六/その七)|白虎の章(その一/その二/その三/その四/その五)|玄武の章(その一/その二/その三/その四/その五/その六)|解説・伊東昌輝

カバー:原田維夫
解説:伊東昌輝
時代:延文三年(1358)八月
場所:東洞院の伊勢貞継邸、播州白旗城、六角万里小路、三条坊門、二条第、今熊野、石清水八幡宮、室町第、仙洞御所、春日社、北山第ほか
(文春文庫・638円・03/10/10第1刷・404P)
購入日:04/03/08
読破日:04/04/02

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