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秋山久蔵御用控 傀儡師

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秋山久蔵御用控 傀儡師秋山久蔵御用控 傀儡師
(あきやまきゅうぞうごようひかえ くぐつし)
藤井邦夫
(ふじいくにお)
[捕物]
★★★☆☆☆

南町奉行所吟味方与力の活躍を描く「秋山久蔵御用控」シリーズは、これまでKKベストセラーズのベスト時代文庫で13作刊行されてきた。新たに、文春文庫にレーベルを移して刊行される。その第1弾が本作で文春文庫書き下ろしである。

ベスト時代文庫と文春文庫の刊行状況は下記のとおり。

▼ベスト時代文庫版(カッコ内は発売年月)
1. 神隠し 秋山久蔵御用控 (2004年8月)
2. 帰り花 秋山久蔵御用控 (2004年11月)
3. 迷子石 秋山久蔵御用控 (2005年2月)
4. 埋み火 秋山久蔵御用控 (2005年5月)
5. 空ろ蝉 秋山久蔵御用控 (2005年7月)
6. 彼岸花 秋山久蔵御用控 (2005年11月)
7. 乱れ舞 秋山久蔵御用控 (2006年4月)
8. 花始末 秋山久蔵御用控 (2006年8月)
9. 騙り者 秋山久蔵御用控 (2007年1月)
10. 赤い馬 秋山久蔵御用控(2007年9月)
11. 後添え 秋山久蔵御用控(2008年5月)
12. 隠し金 秋山久蔵御用控 (2009年12月)
13. 口封じ 秋山久蔵御用控(2010年12月)

▼文春文庫版(カッコ内は発売年月)
1. 傀儡師 秋山久蔵御用控 (2011年12月)
2. 神隠し 秋山久蔵御用控 (2012年3月)
2. 帰り花 秋山久蔵御用控 (2012年5月)
3. 迷子石 秋山久蔵御用控 (2012年6月)
4. 埋み火 秋山久蔵御用控 (2012年7月)

さて、本作は文春文庫としては1巻めだが、物語としては14作めにあたる。久蔵の妻、香織がまもなく出産を迎えそうなところだが、1巻から読んでいるともう少し感慨深くなるのかも。

「仰る通り、大名家は我ら町奉行所の支配違い。世継ぎを巡って家中にどんな争いがあろうが、知った事じゃあない。だが、何の関わりもねえ江戸の庶民が巻き込まれ、連れ去られたとなると黙っているわけにはいかねえ」
 久蔵は、早川を厳しく見据えた。
 
(『傀儡師 秋山久蔵御用控』「第三話 花明り」P.247より)

主人公の南町奉行所吟味方与力秋山久蔵は、“剃刀久蔵”と称され、悪人たちに恐れられている。何者にも媚びへつらわず、自分のやり方で正義を貫く。「町奉行所の役人は、お奉行の為に働いているんじゃねえ、江戸八百八町で真面目に暮らしている庶民の為に働いているんだ。違うかい」と。

今回収録された四話は、秋山久蔵の「剃刀」ぶりが遺憾なく発揮されていて、痛快である。あるときは心形刀流の剣技を披露し、あるときは大名家の留守居役を恫喝したり、またあるときは鬼平のように御家人姿で市井の居酒屋に出没したりと。

この主人公久蔵の言動が物語の読み味の良さにつながっている。

主な登場人物
秋山久蔵:南町奉行所吟味方与力。心形刀流の遣い手。“剃刀久蔵”と称され、悪人たちに恐れられている。
柳橋の弥平次:秋山久蔵から手札を貰う岡っ引で、柳橋の船宿『笹舟』の主人
幸吉:弥平次の下っ引
長八:夜鳴蕎麦屋で、弥平次の手先
寅吉:鋳掛屋で、弥平次の手先
雲海坊:托鉢坊主で、弥平次の手先
勇次:船頭で、弥平次の手先
由松:しゃぼん玉売りで、弥平次の手先
伝八:『笹舟』の老練な船頭の親方
神崎和馬:南町奉行所定町廻り同心
香織:久蔵の妻
与平:秋山家の下男
お福:与平の女房で、秋山家の女中
おまき:弥平次の女房で、『笹舟』の女将
お糸:弥平次、おまき夫婦の養女
小川良哲:小石川養生所本道医
お鈴:小石川養生所の介抱人、産婆見習い
五郎八:小石川養生所の下働き
神明の平七:南町奉行所の定町廻り同心から手札をもらう岡っ引
庄太:平七の下っ引
白縫半兵衛:北町奉行所の臨時廻り同心
本湊の半次:半兵衛から手札を貰う岡っ引
役者崩れの鶴次郎:半次の幼なじみ

「傀儡師」
山口清之助:浪人者
およし:飲み屋『おたふく』の女将
宗吉:およしの父親で板前
応海:修徳寺の住職
富造:木戸番
五郎兵衛:日本橋平松町の金貸し
おつや:五郎兵衛の妾
おさだ:五郎兵衛の飯炊き
森川重四郎:浪人
岡田竜之進:浪人

「闇討ち」
倉木小十郎:久蔵を襲った浪人
加藤浩一郎:久蔵を襲った相州浪人
田中:久蔵を襲った浪人
了庵:笙仙寺の住職
佐和:料理屋『宮川』の女将
作造:感萬寺の寺男

「花明り」
黒沢:高島藩藩士
源吉:船頭
お眉:側室
萩尾:老女
西平:高島藩藩士
土田:高島藩藩士
横塚:高島藩藩士
手塚左内:大目付安藤采女正の用人
早川庄左衛門:高島藩留守居役
小田切監物:高島藩江戸家老

「身投げ」
吉右衛門:日本橋室町の呉服屋『京屋』の主
茂平:居酒屋『つる亀』の主
蓑吉:『つる亀』の使用人
切通しの松五郎:岡っ引
清助:松五郎の手下
吉蔵:入谷鬼子母神裏の長屋に住む百姓
喜多八:本郷五丁目の太物店『川越屋』の番頭
富次郎:浅草広小路の呉服屋『福之屋』の主

物語●「傀儡師」定町廻り同心の神崎和馬は、下っ引の幸吉と日本橋北詰の茶店で休んでいると、日本橋の上で、浪人の山口清之助が抜き身を振り廻し、逃げ惑う人々を追い回しているところに遭遇する。和馬が乱心者の浪人を取り押さえてみると、暴れた事を何も覚えておらず、傀儡人形のように誰かに操られたようだという…。

「闇討ち」南町奉行所での仕事を追えて八丁堀岡崎町の組屋敷に帰る途中の秋山久蔵は、竹河岸で三人組の刺客に襲われた。久蔵が心形刀流の抜き打ちを一閃して、刺客の一人の腕を斬り飛ばし、鋭く誰何すると残りの二人の浪人は闇に逃走した。刺客を放ったのは誰なのか、久蔵は柳橋の弥平次らを使って、逃げた浪人の行方を追う…。

「花明り」養生所産婆見習いで介抱人のお鈴は、秋山屋敷に往診した帰りに、鉄砲洲波除稲荷の脇で、高島藩藩士の黒沢らにかどわかされた。船着場から猪牙舟に乗せられて連れて行かれた先には、臨月を迎えた結構な身分の若い女がいた…。

「身投げ」御厩河岸の船着場に草履が揃えられ、遺書が残されていた。遺書は日本橋室町の呉服屋『京屋』の主・吉右衛門のものだった。吉右衛門は前日の夕方に出かけたまま帰ってきてはいなかったが、死体も江戸湊へ流されてしまったのか発見できなかった。遺書には、騙り者に騙されて知り合いに借りた金が返せないのを詫びての身投げだと記されていた…。

目次■第一話 傀儡師|第二話 闇討ち|第三話 花明り|第四話 身投げ

装画:西のぼる
デザイン:中川真吾
時代:明記されず
場所:八丁堀岡崎町、南町奉行所、日本橋北詰、堀江町四丁目、小網町二丁目、小石川養生所、神田明神、入谷鬼子母神、平松町、玉池稲荷、竹河岸、三田三丁目、波除稲荷、向島堀切村、日本橋室町、本郷五丁目、ほか
(文藝春秋・文春文庫・657円・2011/12/10第1刷・327P)
入手日:2012/06/17
読破日:2012/07/06

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