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みのたけの春

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みのたけの春
みのたけの春
(みのたけのはる)
志水辰夫
(しみずたつお)
[幕末]
★★★★☆☆☆

作品の舞台となった北但馬の貞岡を地図で探すが見つからない。架空の地名で、実在の村岡(江戸時代に村岡陣屋があった)をモデルにしているようだ。土地勘のない場所だったので、地図を時折見ながら、新鮮な気分で旅するような感じで読んだ。

貞岡は日本海から六里ほど内陸に入った矢田川沿いの細い町だった。京都から因幡へ抜ける山陰道の要衝として古くから栄えてきたところだが、昨今はかつての賑わいを失っている。北但馬の中心で、近くに銀山があって天領時代が長く続いた。
(『みのたけの春』P.13より)

巻末の北上次郎さんによる解説で、この舞台設定について種明かしがされている。江戸、あるいは京、大坂に一日、二日ぐらい離れた場所で田舎というのが作者の狙いとのこと。この作品でも見事にはまった感じがする。

時代小説のヒーローというと、『竜馬がゆく』の竜馬のように、田舎から江戸や京へ出て活躍するのが常道のパターン。本書の主人公清吉が故郷から動かず、ひたひたと押し寄せてくる時代の波に向き合いも、あえてその波から背を向け自身の信じる道を歩む姿が感動的。人として何を大切にするか考えさせられ、読んでいるうちに静かに血が滾ってきて、胸が熱くなる。

清吉が山越えをして潜伏中の友に会いに行くシーン、昔読んだシミタツ(志水辰夫)さんの冒険小説の一場面を思い出して懐かしくなった。「みのたけ」の意味が読み終えた後、よくわかった。この作品はシミタツさんでなければ書けない時代小説である。

主な登場人物◆
榊原清吉:貞岡・西山村の郷士
かづえ:清吉の母
与助:榊原家の下男
諸井民三郎:清吉の友人
かよ:民三郎の妹、十七歳
さなえ:民三郎の妹、十五歳
又八:民三郎の次弟、十三歳
文吉:民三郎の末弟、十一歳
武川庄八:清吉の友人、静谷村の大庄屋の息子
きぬ:庄八の姉
柳澤宋元:三省庵の師
みわ:宋元の娘
橘川雅之:剣術道場尚古館の館長
内田政太郎:三省庵の塾頭
片桐秀輔:姫路酒井家家臣で郡方御用掛り
石渡孝臣:三省庵の塾生で、鹿嶋神社の神官
斎藤国弥:三省庵の塾生の副頭格、出石藩士
田中順一郎:三省庵の塾生
中村久作:三省庵の塾生
宮原富之助;三省庵の塾生
高橋末春:三省庵の塾生
高木門七:三省庵の塾生で、小笠村の商家の総領
新村格之進:貞岡陣屋の手附の代官代行格
高倉忠政:丹波篠山藩青山家京都留守居役
おさと:農家の娘
久造:峰山村の猟師
ふさ:久造の女房
すみ:清吉の家の近所の百姓女
外吉:すみの息子
忠兵衛:岩尾村片品の猟師

物語●幕末の北但馬・貞岡。かつては生野銀山として、京と因幡を結ぶ山陰道の要衝として栄えたこの地は、銀の採掘量の大幅な減少や参勤交代路の切り替えなどで、寂れつつあった。貞岡の小さな村に住む郷士の榊原清吉は、病気の母と巨額の借財を抱えながらも、養蚕で家計を立て直し、つましく暮らしていた。
ある日、同じ私塾・三省庵に通う親友の諸井民三郎が刃傷沙汰を起こす。清吉は友を救うべく奔走するが、事態は思わぬ方向へ…。

目次■みのたけの春/解説 北上次郎

装画:小山進
カバーデザイン:菊地信義
解説:北上次郎
時代:文久三年(1863)
場所:北但馬・貞岡(架空:村岡がモデルか)西山村、静谷村、河内村、八井谷峠、大畑村、和田村、峰山村溝谷、久萬峠、原口村、奥山、岩尾村片品、京都東山、岡崎、三条大橋、豊岡・羽倉村、ほか
(集英社・集英社文庫・781円・2011/11/25第1刷・486P)
購入日:2011/11/25
読破日:2011/11/29

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