王事の悪徒 禁裏御付武士事件簿

王事の悪徒 禁裏御付武士事件簿王事の悪徒 禁裏御付武士事件簿
(おうじのあくと・きんりおつきぶしじけんぼ)
澤田ふじ子
(さわだふじこ)
[捕物]
★★★★

元禄の京を舞台に、禁裏の警護にあたる幕府の役人が活躍するシリーズ第3弾。『神無月の女』『朝霧の賊』のあと、しばらく間が空いてのリリースで、装画が中環さんから宇野信哉さんに代わり、表紙の雰囲気がだいぶ変わった。

澤田さん得意の京を舞台にした傑作時代小説。禁裏御付武士とは、所司代配下で、禁裏や仙洞御所を警固する役目で、寛永二十年に設置された。月番で、与力、同心は各門に詰め、朝廷の動きをうかがい、事件の探索に当たる。多くは伊賀・根来衆から選ばれたという。

主人公の久隅平八は若年にして幕府の直轄領甲賀の多羅尾(たらお)にやられ、隠士の大森捜雲から武芸百般と隠密の技をみっちり修行させられた。六尺棒をにぎり、脛巾姿で禁裏(御所)の寺町御門に立って門番するのが主の任務であるが、そのかたわら、非番の日に変装して〔市歩〕をし、京の町の治安維持にあたっている。

「印地の大将」「王事の悪徒」「呪いの石」あたりが、禁裏御付武士の職掌にあった活躍振りを示していて、興味深い。ほかの物語は京の市井により直結したものとなっている。
物語の随所に、京の歴史や公家の生活、文化を散りばめていて、知的好奇心をくすぐるシリーズ。平八の母のつがのことばが印象に残った。

「わたくしが尊いと思うているのは、江戸の将軍さまでも、ご禁裏さまでもございませぬ。妻子のためにひたいに汗して働く棒手振りのお人や、雨の日も、朝早くからせっせとお豆腐作りに励んでいるようなお人たちです。そんなお人たちこそ神や仏。不遜かもしれませぬが、わたくしは本当のところ、そう思うております」

物語●京都御所の警固にあたる御付同心久隅平八(くずみへいはち)は、非番の日には、生薬の行商人に身をやつし〔市歩(いちあるき)〕として市中の諜報活動をしていた。

「蜘蛛の糸」老娼ばかりが絞殺されるという連続事件が起こっていた。そんなある夜、平八は、夜舞い(夜鷹)のお鈴に声を掛けられた…。「印地の大将」平八の同僚の高田喜四内は、印地打ちが得意で、鴨をよく捕ってきて、平八らに配っていた…。「王事の悪徒」京の旅籠に長逗留している浪人が朝と夕方の二回、禁裏の方角に向って礼拝をしているという話を聞き、平八ら禁裏付武士たちは不審を感じた…。「やまとたける」市歩に出た平八は、山科に下りる日ノ岡峠で三人のならず者に囲まれてひどく脅えている娘を見かけた…。「左の腕」旅籠の若狭屋に三年ほど前から何度か滞在したことがある、尾張藩の武士がやってきた。滞在のたびに身なりが粗末になり、顔も険しく変わってきたが、今回は一見して違っていた…。「呪いの石」寺町御門の立勤めをしていた平八は、武家伝奏の広橋大納言家に仕える茶之間(下女)が、両手で小さな風呂敷包みを重そうに下げておぼつかない足取りで御門にやってきたのを不審に感じた…。

目次■第一話 蜘蛛の糸/第二話 印地の大将/第三話 王事の悪徒/第四話 やまとたける/第五話 左の腕/第六話 呪いの石/解説 大野由美子/澤田ふじ子 著書リスト

カバーイラスト:宇野信哉
カバーデザイン:東京図鑑
解説:大野由美子
時代:明示されず
場所:四条高瀬川筋、六波羅蜜寺、寺町御門、知恩院、三条瑞泉寺、方広寺、日ノ岡峠、東山真如堂、廬山寺、上京・道正町ほか
(徳間文庫・590円・05/01/15第1刷・347P)
購入日:05/01/17
読破日:05/02/11

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