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ご制外新九郎風月行 邪神

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ご制外新九郎風月行 邪神
ご制外新九郎風月行 邪神
(ごせいがいしんくろうふうげつこう じゃしん)
湊谷卓生
(みなとやたくみ)
[伝奇]
★★★★☆

カバーの著者紹介によると、早稲田大学教育学部卒業。戦国時代など歴史の研究・執筆に携わり、日置流の弓を嗜み、能・狂言などにも親しむ。江戸時代を舞台とした作品は、本作が初めての発表だそう。

物語の主人公の雨宮新九郎は、武田遺臣で軍学者の雨宮随天斎の養子で、京で幼少期を過ごす。十二のときに大商人になった随天斎の弟・甲州屋の世話で江戸に下り、日本橋の大店菱屋の厄介になった。浪人ながら、甲州屋から月々十分なものが届き、金に困らない身分。

江戸で片瀬権之助の道場で剣術を修行するが、四年前に道場主が亡くなり、荒れ寂れ、やくざ者の巣窟となった道場で、一人剣技を磨く。放っておくと退屈しのぎに裏稼業の危うい事にも手を出しかねない新九郎に、凌雲寺の玄海は用心棒の仕事を斡旋していた。

新九郎は、新興宗教教団に入信した富商の娘の奪還を依頼される。娘を取り戻す過程で、思いもかけない人物からも、教団の実態を探る指揮を執るように要請される。

「その方のことは、万事、伯耆に扱わせる。伯耆、この者の働き良いように計らうが良かろうぞ」
 はっ、伯耆が叩頭した。
「この者のことは、ご制外と心得よ」

(『ご制外新九郎風月行 邪神』P.104より)

制外とは、きまりの外、制度外のこと。結城秀康を藩祖とする越前松平家は、「制外の家」(幕府の制度の外にあてはまらない特別な家)として扱われた。

天華一は、若い娘に対してマインドコントロールをしていたわけだが、今年の初めにワイドショーや女性週刊誌を賑わせていた、女性タレントのことを思い出した。

新人作家ながら、興味深いテーマを選び、伝奇小説として独創的な物語に仕上げている。次回作が楽しみだ。

主な登場人物
雨宮新九郎:浪人で片瀬道場の用心棒
竹本美緒:道場破りの女
玄海:本郷の凌雲寺の僧で新九郎の知人
十内:中年の浪人者
喜伊:新九郎の義理の姉
おちづ:日本橋の葉茶屋「尾島屋」の娘
音吉:てづま遣い(手品師)
与平:芝居者
天華法師:天華一の教祖
金剛:天華一の世話役
無明:天華一の世話役
黄鬼、白鬼、黒鬼、赤鬼、緑鬼:天華一の裏の組織の指揮者たち
波一:天華一の裏の組織の手先
村瀬慎一郎:幕臣で、新九郎とは道場で相弟子
浦里:吉原の遊女
清蔵:刺青師の彫清
大久保伯耆:幕閣の切れ者
土田山三郎:大久保伯耆の家来
大御所:前将軍秀忠
徳川忠長:駿河大納言。将軍家光の二つ違いの弟
了厳和尚:駿府・太原寺の僧
内田嘉右衛門:幕府使役
矢吹八郎右衛門:甲州浪人

物語●無頼の生活を送る浪人雨宮新九郎は、日本橋の葉茶屋の尾島屋に、新興宗教教団・天華一から娘を取り戻すよう依頼される。偶然知り合った、女流剣士の美緒とてづま遣いの音吉の力を借りて、天華一に探りを入れた新九郎は、手段を選ばずに資金集めに奔走する教団の実態を知ることに…。

目次■第一章 てづま遣い/第二章 ご制外/第三章 罠と罠/第四章 月下の隻腕

カバーイラスト:蓬田やすひろ
カバーデザイン:齋藤視倭子
時代:寛永七年(1630)
場所:湯島天神、日本橋、銀座、向島、佐久間河岸、根岸、中橋、豪徳寺、千住、鎧河岸、吉原(日本橋葺屋町の一画)、寛永寺、神田駿河台下、九段、駿府、ほか
(学研パブリッシング・学研M文庫・638円・2012/02/28第1刷・288P)
入手日:2012/04/25
読破日:2012/04/30

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