子麻呂が奔る

子麻呂が奔る
子麻呂が奔る
(ねまろがはしる)
黒岩重吾
(くろいわじゅうご)
[飛鳥]
★★★★☆

聖徳太子配下の官人・調首子麻呂(つぎのおびとねまろ)が活躍する時代ミステリー『斑鳩宮始末記』の続編。

連作形式の古代捕物帳。今回は、小野妹子が遣隋使の長に内定する、推古十五年の初春から始まり、廏戸皇太子の対隋外交が失敗し、小野妹子が国書紛失事件を起こした推古二十年で終わる。遣隋使や渡来人など、日本と大陸との関係が密接な時代だということが、物語の背景で描かれていくのが興味深い。

2作目ということで、登場人物たちが練れてきた印象を受ける。文武に優れた調首子麻呂の正義感あふれる捜査ぶりと、その部下で、何とも言えない味わいのある魚足(うおたり)との掛け合いが面白い。

また、事件解決能力は高いが、自分のことや家族のことでは大いに悩む、子麻呂のキャラクターに好感が持てる。もっといろいろと読みたいところだが、作者の黒岩さんが2003年3月7日に、享年79歳で亡くなっている。残念だ。

物語●「子麻呂と雪女」雪が三日間降り続いた後の粉雪の日、子麻呂は自宅の傍で、蓑を被った若い女人・キヌイが蹲っているのを見かけて助けた…。「二つの遺恨」子麻呂は、上司の秦造河勝(はたのみやつこかわかつ)から、子麻呂の息子で斑鳩宮の学堂で学ぶ百舌が時々学堂を休んでいることを知らされる。平群郡で、郡司側の小役人と農民の喧嘩があり、農民が重傷を負ったという事件が起こった…。「獣婚」秦造河勝の屋形で、子麻呂とともに、魚足、猪口、犬歯ら子麻呂の部下たちも呼ばれ酒盛りが催された。酒席で、馬・牛・鶏などとの媾合について話題になった数日後、官人が犬と媾合している姿で死んでいるのが見つかった…。「新妻は風のごとく」子麻呂に再婚話が持ちこまれた。婚姻話の家は、河内の津守の役人の娘で、二十五歳で二年前に夫を亡くして実家に戻っているコネであった。そのコネが子麻呂と会った翌日、失踪した…。「毒茸の謎」隋からの使者が帰国した翌年、奇妙な病が官人たちを襲った。比較的若い下級の官人たちが、突然、泡を噴いて倒れ、そのまま死んだり、神懸りになって踊り、そのまま倒れて死ぬか、口もきけなくなる。今まで知らなかった伝染病かと、皆恐怖におののいたが、五人目の官人が一時意識を取り戻し、昨年隋使が持ち込んだ精力剤を飲んだのが原因らしいとわかった…。「牧場の影と春」十五歳になった娘・イトが婚姻し、一人ぼっちになった子麻呂は、初めて空虚を感じた。そんな子麻呂の前に現われたのは、落馬で生命を落とした馬司の役人の妻ハルだった…。

目次■子麻呂と雪女|二つの遺恨|獣婚|新妻は風のごとく|毒茸の謎|牧場の影と春|解説 重里徹也

カバー画:原田維夫
カバーデザイン:大久保明子
解説:重里徹也
時代:推古十五年(607)
場所:斑鳩宮、富雄川上流、平群郡、安堂、矢田川、河内の津守、荒陵寺、住吉、北河内、矢田丘陵、交野ほか
(文春文庫・514円・04/08/10第1刷・339P)
購入日:04/08/11
読破日:04/09/20

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