『傑作! 名手たちが描いた 小説・鎌倉殿の世界』の解題を担当しました。

雲さわぐ 天草の代官 鈴木重成

雲さわぐ 天草の代官 鈴木重成雲さわぐ 天草の代官 鈴木重成
(くもさわぐ・あまくさのだいかん・すずきしげなり)
藤井素介
(ふじいもとすけ)
[評伝]
★★★★☆☆

『海鳴りやまず―八丈流人群像―』(講談社文庫)で、第4回時代小説大賞を受賞した、藤井さんの第2弾。あとがきに書かれていた、本書の執筆の動機がふるっている。著者の若い頃の演劇の師で俳優の内田朝雄さんが、悪役の代名詞である代官とその兄である偉い坊さんの話を教えたという。ちなみに内田さんは、悪役俳優として知られている。

この本、実は1年半ぐらい前に入手し、積ん読のまま、また1年後に同じ本を買ってしまい、あげくに1冊を海狼亭写楽斉さんに譲ってしまった。島原・天草の乱というのが、何やら悲惨そうで、後回しにしていたのだ。しかし、その海狼亭さんから、面白かったという感想をいただき、慌てて新年早々に読み始めた次第。

読み始めると、懸念は払拭され、物語に引き込まれ、天草代官・鈴木重成に共感し、やがて、目頭に熱いものが込み上げてきた。政治家ではなく、地方行政者が全面的に描かれる作品というのは珍しい。

主人公・鈴木重成は、三河足助(あすけ)鈴木氏の末裔と記されている。重成の兄・鈴木正三(しょうさん)は、旗本として家康・秀忠に仕えながら、42歳にして突如出家し、禅宗の坊さんになり、弟と協力して、信仰の面から天草復興に大きな貢献をした人。『江戸打入り』(半村良著・集英社文庫)の主人公・鈴木金七郎とは関係があるのだろうか?

物語●島原・天草の乱後3年。2万1千人の住民のうち1万4千人が乱で死んだといわれる天草は、深刻な人手不足で、田畑は荒れ放題、漁船は朽ち果て、島のすべてがまるで津波にでも襲われたように衰微していた。初代の天草代官として、着任した鈴木重成は、隠れ吉利支丹狩りを行った。そんな中で一人の男と出会った…。

目次■第一章 寛永十八年(1641) 草の根分けても/ツチトリモチ/トラツグミ/人形/ハナガカシ|第二章 寛永十九年(1642) サイカチの実/果し眼念仏/一仏二十五菩薩/キランソウ/ヤマモモ|第三章 正保元年(1644) 人身御供|第四章 承応二年(1653年) 蜘蛛/狂瀾既倒|あとがき/天草関係地図

装画・題字:李庚
装幀:武山忠(スタジオ リバーハウス)
地図:磐広人
時代:寛永十八年(1641)
場所:天草
(講談社・1,650円・95/11/20第1刷・341P)
購入日:98/08/25
読破日:00/01/04

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