心優しき時代小説ヒーロー、居眠り磐音

佐伯泰英さんの『野分ノ灘』を読み始めた。「居眠り磐音江戸双紙」シリーズの第20作目になる。佐伯さんの数多いシリーズの中でも、最も巻数が多く、発行部数も350万部突破という超人気シリーズである。

野分ノ灘 ─ 居眠り磐音江戸双紙 20 (双葉文庫)

野分ノ灘 ─ 居眠り磐音江戸双紙 20 (双葉文庫)

主人公の坂崎磐音は性格がよくて、誰に対しても思いやりがあり、優しい。この辺が幅広い読者をもつ要因のひとつであろう。

「国許の正睦から、磐音、そなたの一時の帰国と、おこんを連れて行く願いが出されておる。関前に参るか」

旧藩の豊後関前藩の藩主・福坂実高の問いに対して、

「父の文を最前読みましてございます。母はそれがしの他家養子入りをなかなか認めたがらぬ様子で、祝言前にそれがしとおこんどのに先祖の墓参を願うております」

と答え、

「おこんを伴うか」という念押しに、

「この一件、おこんどのは未だ承知しておりませぬ。話し合いの上、決めとうございます」

と答えている。

いつのときも、許婚のおこんの気持ちを尊重する態度が好ましい。

また、深川暮らしの最初から、世話になった幸吉少年との別れのシーンもしみじみとしたものになっている。

こんな磐音だから、刺客に襲われても

「万が一、そなた様が命を失われることあらば、道中嚢、どちらに届けますな」と訊いてしまう。そのあげく、徹夜で刺客の亡骸を豊島村の寺まで届け、湯灌までしてしまうのだ。

磐音は、浪人生活から新しい生活に入っていく。今回は一つのターニングポイントにあたる巻だ。さあ、続きを読もう。