[A] 思いっきり泣きたいあなたには
江戸時代の京の町に暮らす人々の哀歓を描いた一冊
思いっきり泣きたい人におすすめの逸品。
しかし、単なるお涙頂戴の市井ものではありません。京都在住の作者が、次々と披瀝する、京都の地誌、歴史から当時の人々の職業観を通して、京の町の人々の生活の襞の中に入っていくことができます。
と書くと、なんだか難しそうですが、江戸時代の京都を堪能でき、その一部は伝統として現在も残っているということです。
つまり、京都を解読するに最適な一冊というわけです。
島原遊郭に妹千代を売ろうとした両親を殺めてしまった富士太。末は夫婦と宮大工修業に励む宗吉と錦小路の魚屋で働く千代の幼なじみの二人。幸せ薄い若者たちの見果てぬ夢。京の建仁寺脇の長屋で、貧しいながらもけなげに生きる人々の哀歓を描く時代長編小説。
澤田ふじ子さんの時代小説には「橋」が付く作品が多数あります。
人と人が出会い、そして別れる場所が橋であるからでしょうか。
外れなしのいずれも秀作ぞろいです。
★こんな時代小説もおすすめ
『幾世の橋』(澤田ふじ子・幻冬舎文庫)
『壬生義士伝・上』(浅田次郎・文春文庫)