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大坂侍

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[amazon_image id=”406183617X” link=”true” target=”_blank” size=”medium” ]大坂侍 (講談社文庫)[/amazon_image]
大坂侍

(おおさかざむらい)

司馬遼太郎

(しばりょうたろう)
[短編]
★★★★

エンターテインメント色が濃い初期の司馬さんの作品が好きだ。とくにこの本は、幕末の大坂を舞台にした短篇を収録されているということで気になった。

作者のアイデンティティを感じる大坂人礼賛の短篇集。長編の歴史小説を愛読していた人は、少し違和感を感じるかもしれないが、軽快洒脱で読み味もいい。

「和州長者」旗本の奥方への和州長者の純情ぶりがちょっとせつない。
「難波村の仇討」田舎者や武家をとことんおちょくる大坂人の兄妹奴留湯佐平次とお妙が痛快。
「法駕籠のご寮人さん」後家の女主・お婦以に、新選組の隊士と勤皇の志士を両天秤にかけて、どちらかを突っつけさせようとする番頭の松じじいが良い味を出している。亡くなられたいかりや長介さんのイメージ。
「盗賊と間者」畿内を荒らしまわった元盗賊と、長州藩の間者とその恋人の三角関係を描く。浅田次郎さんの『壬生義士伝』で、一躍有名人となった吉村貫一郎が元盗賊の佐渡八のうどん屋にうどんを食べに来るシーンで登場する。チラッとしか登場しないので注意して読んでほしい。
「泥棒名人」江戸の盗賊と大坂の泥棒の対決ぶりが見物。
「大坂侍」短篇集の中で最も好きな物語。展開が大きいので、長編でも良かったかもしれない。

偉すぎて、ちょっと近寄り難い印象があっただけに、この作品で司馬さんの別の顔を知った気がして、ちょっとうれしくなった。

物語●「和州長者」二千石の旗本青江采女の弟で部屋住みの欣吾は、嫂の佐絵と密通していた。その現場を中間の団平に見られた。その三時間後の暁方、佐絵が死んでいるのが見つかった…。「難波村の仇討」敵討に大坂に出てきた備前岡山出身の若い武士・佐伯主税は、会ったその日に、甘ったれた上方弁を使う娘・お妙と、出合茶屋で関係を持った。三度目の逢曳のときに、お妙から主税の敵である奴留湯佐平次の妹であることを打ち明けられる…。「法駕籠のご寮人さん」駕籠と口入れが稼業の法駕籠で、大坂に金策にやってきた勤皇派の福井藩士・三岡八郎と、新選組の副長助勤の山崎蒸がかち合ってしまった。ご寮人のお婦以は、二人に同席してもらい、法隆寺料理を振る舞うことにした…。「盗賊と間者」うどん屋の佐渡八は、新選組の隊士七人がかりで、二人組の浪士を斬り捨てるのを顔色を変えずに見た。七人を率いた近藤勇に、その度胸を不審に思もわれ尋問された末に、屯所でのうどん屋の商いを許された…。「泥棒名人」五畿内随一の名人といわれた盗賊江戸屋音次郎は、忍び込んだ天満の海産物問屋の寮の庭の茂みでで、風待ちをしていた。音次郎は、侵入できる完全な条件がそろうまでは、雨戸に手をかけない主義にしていた。その音次郎の前に、行者玄達(ぎょうじゃげんたつ)という大坂を代表する泥棒名人が現れた…。「大坂侍」鳥居強右衛門の直系の子孫ながら、今は大坂で十石三人扶持の川同心鳥居又七は、江戸・本所育ちの父の遺言で彰義隊に入ることに…。

目次■和州長者|難波村の仇討|法駕籠のご寮人さん|盗賊と間者|泥棒名人|大坂侍|年譜

カバー:彰義隊絵巻(円通寺蔵)
デザイン:井上正篤
時代:「難波村の仇討」慶応二年。「法駕籠のご寮人さん」慶応三年。「盗賊と間者」慶応元年。「泥棒名人」慶安三年。「大坂侍」慶応三年。
場所:「和州長者」和州二上村。「難波村の仇討」生国魂、堂島川。「法駕籠のご寮人さん」天満。「盗賊と間者」京・因幡薬師、壬生。「泥棒名人」天満、毘沙門裏。「大坂侍」同心町、幽霊橋ほか
(講談社文庫・495円・85/11/15第1刷・01/07/13第32刷・268P)
購入日:04/03/07
読破日:04/05/11

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