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命みょうが 半次捕物控

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命みょうが 半次捕物控命みょうが 半次捕物控

(いのちみょうが・はんじとりものひかえ)

佐藤雅美

(さとうまさよし)
[捕物]
★★★★☆

佐藤雅美さんの作品はお気に入りのものが多いが、必ずしもカバーしきれていない。「半次捕物控」も『影帳』をずいぶん前に読んだきりで、『揚羽の蝶』を読んでいないので、この辺でちゃんと読んでおきたいところだ。岡っ引の生活実態に迫り、リアリティがあって面白い。解説で文芸評論家の末國善己さんが指摘してあるように、主人公の半次は人情派のヒーローでない、きれいごとばかりを言っていない岡っ引だ。

冒頭で、お盆が近づき出入先などから入ってくる付け届けの祝儀がいくらになったかソロバンで勘定し、日ごろもたらしてくれる者たちに渡す二朱銀を祝儀袋に詰めて糊付けする作業にとりかかる。その挙げ句、半次は岡っ引というのにまるで商人だと苦笑する。

そして、もっとも大きな収入源を「引合をつける」ことと「引合を抜く」こととして描いている。

 盗っ人は捕まると、あの店で下駄をこの店で手拭をと、いいかげんなのをひっくるめて盗みましたと白状し、岡っ引は一軒一軒訪ねてまわって、そのことを告げた。これを引合をつけるといった。(p.18)

 引合をつけられると、町奉行所から呼び出しがかかり、店主は当日、町役人(ちょうやくにん)に同道してもらって朝から奉行所に出向かなければならず、それに丸一日とられた。しかも、弁当を用意したり、帰りには付き添いの町役人らをもてなし、謝礼も包まなければならなかった。 つまらないことに時間と金をかけないために、引合をつけられると、つけられた者は知り合いの岡っ引を通じて、引合をつけた岡っ引に相応の対価を支払い、何も盗まれなかったことにしてもらった。これを「引合を抜く」という。作者は、引合を抜いてもらう相場を一分(=一両の四分の一)と記している。主人公の半次は下っ引を四人連れており、月七両二分を稼ぐために、毎日一つを目標に引合をつけることを目標にしていた。

物語●茅場町御旅所薬師様の縁日で、町娘あゆが、田舎侍に尻を触られたと大騒ぎをし、五人連れでやってきていた町火消し人足たちと喧嘩になった。番屋に留め置かれた田舎侍は身元を明かさず、十日間だんまりを続けた。岡っ引の半次が身柄を預かり、調べを始める。田舎侍は蟋蟀小三郎(こおろぎこさぶろう)と名乗り、半次宅に居候することになる…。

目次■第一話 蟋蟀小三郎の新手/第二話 博多の帯/第三話 斬り落とされた腕/第四話 関東の連れション/第五話 命みょうが/第六話 用人山川頼母の陰謀/第七話 朧月夜血塗骨董/第八話 世は太平、事もなし/解説 末國善己

カバー装画:横塚繁
カバーデザイン:柳川昭治
解説:末國善己

時代:文政十二年(1829)七月
場所:本材木町、坂本町二丁目、山王御旅所薬師、五六の番屋、富沢町、住吉町、神田銀町、神田新銀町代地、富岡八幡宮門前、鉄砲洲、加賀町、門前仲町、中目黒ほか

(講談社文庫・629円・05/07/15第1刷・393P)
購入日:05/07/20
読破日:05/07/31

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