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銀のなえし 鎌倉河岸捕物控

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銀のなえし 鎌倉河岸捕物控銀のなえし 鎌倉河岸捕物控
(ぎんのなえし・かまくらがしとりものひかえ)
佐伯泰英
(さえきやすひで)
[捕物]
★★★★

しほが働く鎌倉河岸の名代の酒問屋豊島屋は現存し、豊島屋本店として、現在も名物の白酒をはじめ、酒造業を営まれている。専務の吉村さんは、この作品を通じて、佐伯さんとも親しく交流されるようになったそうだ。この本が刊行されることは吉村さんから教えていただき、楽しみにしていた。

金座裏の宗五郎とおみつの養子となり、若親分として新たなスタートを切った政次。「鎌倉河岸捕物控」も大きな転換期を迎えた。

今回は、まさに政次の颯爽とした活躍振りがまぶしい一作。序章で道場破りを退け、第一話で手柄を立てて、その御礼でトレードマークとなる、「銀のなえし」を手に入れることに。「なえし」は、「なやし」とか「萎し」とも呼ばれたり書かれたりする打物隠しの武器で、敵の手なり腕なりを打って萎えさせるところから、その名は由来した。政次に新しく贈られたなえしは、一尺七寸余の鈎のない八角の十手のようなもので、銀製の柄は鹿のなめし革で包まれ、柄頭には銀環がついていた。柄と本体には鈎も鍔もなかったが、八角の輪が二つを隔てるように嵌められていた。凝った造りで、宗五郎の金流しの十手と遂になる金座裏の新名物。

銀のなえしを武器に大活躍の政次だが、捕物ばかりか、剣の方でも目覚しい腕の冴えを見せ、ファンにはたまらないところ。そういえば、佐伯作品のヒーローたちは、言い意味で読者の予想を裏切るスーパーぶりを見せてくれて、読んでいて何とも気持ちがいい。

物語●政次が朝稽古に通う赤坂田町の神谷道場に、道場破りが現れた。かつて鳥取新田藩に仕えていた武術家渡辺堅三郎と名乗る浪人だった。政次が相手になり、袋竹刀で一本勝負の末に、渡辺は勝負に敗れた。渡辺はこの数日満足な食事をとらずに、腹に力が入らぬ状態での道場破りということを知り、道場主の神谷丈右衛門は道場に滞在するように申し出た…。

目次■第一話 荷足のすり替え/第二話 銀のなえし/第三話 唐獅子の鏡次/第四話 巾着切り/第五話 八つ山勝負

装画:浅野隆広
装幀:芹澤泰偉
時代:寛政十一年(1799)蝋月
場所:赤坂田町、金座裏、鎌倉河岸、浅草西仲町、吾妻橋、鉄砲洲、新右衛門町、霊岸島新堀、本石町四丁目、百人町、道浄橋、花川戸、通一丁目ほか
(ハルキ文庫・667円・05/03/18第1刷・288P)
購入日:05/03/24
読破日:05/04/02

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