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切り絵図屋清七 ふたり静

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切り絵図屋清七 ふたり静切り絵図屋清七 ふたり静

(きりえずやせいしち ふたりしずか)

藤原緋沙子

(ふじわらひさこ)
[市井]
★★★★☆

藤原緋沙子さんの新しい文庫書き下ろしシリーズは、わかりやすく美しい江戸の地図を作ろうとする清七を主人公とする、連作形式の時代小説。古地図好きにはたまらない設定だ。

副題に「切り絵図屋清七」と入っていて、多色刷りのカラーリングや、名前の頭が大名屋敷、武家屋敷の正面玄関を向くなどのルールから、「尾張屋清七板」の切り絵図がモデルとなっている。

尾張屋は嘉永二年(1849)に切り絵図を出板したというから、明示されていないが、『ふたり静』の描かれている時代もその頃であろうか。(訂正:天保十三年が五年前という記述があり、弘化四年にあたる)。作品中に麹町の荒物屋が先に切り絵図を刊行したと書かれているが、そちらは近吾板と呼ばれる近江屋のことだ。ちなみに尾張屋は金鱗堂とも呼ばれ、麹町六丁目に店があった。

さて、『ふたり静』の物語であるが、絵双紙屋「紀の字屋」に集る浪人・清七郎と絵師の与一郎、元巾着切りの小平次という三人の若者の青春をあわせて描く、市井小説となっていて、読み味がよく、今後の展開が楽しみだ。

物語●旗本の妾腹の次男に生まれた、長谷清七郎は、家士同然の扱いを受けていた家を飛び出し、日本橋十軒店本石町の裏長屋に暮らす。日本橋の絵双紙本屋『紀の字屋』からの筆耕などで生計を立てていた。清七郎は、弱い者や困った者を見過ごしにできない性分で、江戸の町に不慣れな者たちが辛い目に遭っていると知り、自分の足で調べ上げた切り絵図を作りたいと夢を抱く。
折りしも、紀の字屋の主・藤兵衛が脚気を悪化させて、隠居することになり、店を継がないかと、話を持ちかけられる。

目次■第一話 春塵/第二話 紅梅坂/第三話 ふたり静/解説 縄田一男

カバー:蓬田やすひろ
解説:縄田一男

時代:弘化四年(1847)ごろ(天保十三年が五年前)
場所:本石町、十軒店、浮き世小路、瀬戸物町、品川町、通り一丁目、番町、深川馬場通り、海辺大工町、紅梅坂、昌平橋、水道橋、向島、御成道、麹町、日比谷御門松平土佐守中屋敷、平川町、回向院門前、青山・福王寺ほか

(文春文庫・571円・2011/06/10第1刷・303P)
購入日:2011/06/29
読破日:2011/07/03

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