「三国志」ヒーロー、曹操の知られざる青春時代の冒険を活写

『曹操 卑劣なる聖人 一』|王暁磊・後藤裕也監訳・岡本悠馬訳|曹操社発行・はる書房発売

曹操 卑劣なる聖人 一中国の作家、王暁磊(おうぎょうらい)さんの歴史小説、『曹操 卑劣なる聖人 一』(曹操社発行・はる書房発売)をご恵贈いただきました。

曹操というと、吉川英治さんや横山光輝さんの『三国志』の影響から、名門の出で、機知と権謀に富んだ政治家で戦略豊かな軍人の顔を持つ反面、悪辣で義に薄く、傲慢な人物というイメージがあります。

昔は劉備派でしたが、最近は曹操に魅力を感じています。

本書は、中国在住の歴史作家の王暁磊(おう・ぎょうらい)さんによって書かれた、曹操を主人公とした三国志小説です。
全10巻からなるシリーズで、中国大陸ではシリーズ累計300万部を突破しているとそうです。
(日本では2021年7月時点で、第5巻まで刊行されています)

出版元は、曹操社さんです。

曹操社
曹 操 卑劣なる聖人 第五巻 ●2021年4月上旬刊行 王暁磊 後藤裕也 岡本悠馬 川合章子 四六上製 608頁 2,640円(税込) ISBN 978–4–910112–04–6 第五巻では、呂布を降し、張繡を味方に引き入れ、後顧の憂いを断った曹操が、いよいよ袁紹と天下分け目の決戦「官渡の戦い」を繰り広げる。 曹操の...

第一巻では、曹操が悪ガキだった12歳のころからはじまり、“腐れ宦者(かんじゃ))の筋”と揶揄されながらも、「治世の能臣(のうしん)」となっていく20代前半までを描いています。
曹嵩、夏侯惇、卞氏、袁紹、鮑信をはじめ何顒、橋玄、許劭、王甫、秦宜禄といった人物が登場します。
(Amazon紹介文より)

後漢の永康元年(167)冬、皇帝劉志は三十六歳で病没し、世継ぎ不在のなか劉宏がわずか十二歳で新帝に擁立されました。

西方の辺境では漢王朝と羌族の戦いが続いていました。

京畿地方の治安維持と中央の百官の監察を行う司隷校尉の曹嵩は、宦官勢力と親密な間柄を保ち、高官にのし上がり、私利を図っていました。

「『中庸』だと。はっはっはっ」曹嵩は声を出して笑った。「何が中庸だ。役立たずもいいところだ。倅が書物を読むようならわしの頭に白髪など生えまい。正直の申せ。お前たちは何をして遊んでいたのだ」
「旦那さま」下男は無邪気に笑った。「まったく旦那さまには敵いません。わたくしども、裏庭で坊ちゃんの闘鶏にお付き合いしていました。そこへわたしどもの頭が、午後に元盛さまがいらっしゃると伝えに来たところ、その言葉も終わらぬうちに坊ちゃんはひっくり返ってしまったのです。これおんはわたしどもも肝をつぶして、医者を呼ぼうということなりました」

(『曹操 卑劣なる聖人 一』P.19より)

曹嵩の息子曹操は、十一歳で、勉強嫌いで遊び呆けているばかり。曹操の従弟の曹熾(元盛)から勉強を強いられると、地べたに倒れて痙攣する中風の芝居までします。

利発で機転が利く面がありながらも、奔放すぎる性格で勉強嫌いの曹操が登場します。

曹操は、祖父が宦官であり、その養子の曹嵩も宦官勢力と深く結びついている、“腐れ宦者の筋”という家系に強いコンプレックスを持っていました。

ある日、退屈して、夜家を抜け出した曹操は、宦官に追われて逃亡している太学の学生、何伯求を助けました。

「馬鹿者めが! お前ひとりのために一族全員が殺されるのだぞ!」怒りの冷めやらぬ曹嵩は、また手を振り上げた。
「もういい、もういいではありませんか」曹熾は曹嵩の手を引き止めた。「こんな幼い子に事の重大さがわかるはずありません」
「わたしは間違っていません」どこから勇気が湧いてくるのかはわからなかったが、阿瞞は父に向って喚いた。「何伯求は悪人ではありませぬ。弟はいつも『義を見て為さざるは勇無きなり』と申しています。なぜ助けてはいけないのですか。宦官はあの人の友人を皆殺しにしました。八十人以上ですよ。七十歳の年寄りまで殴られてむごい死に方をしました。宦官たちこそ悪人だ!」

(『曹操 卑劣なる聖人 一』P.45より)

曹嵩は、曹操を厳しく育てられなかったのは自分の責任とし、曹操に故郷(沛国の譙県)で厳しく学び直すことを命じました。

洛陽の大都会から田舎にやって来た曹操少年は、曹嵩の従弟・曹胤から孫武の兵法書十三巻を学んだりして、孫子の兵法を使って地元の子供たちとの喧嘩に勝って、新しい友達を作ったりします。

本書では、やがて曹嵩に許されて洛陽に帰る曹操は、経学者の名門袁紹(えんしょう)や老賢臣橋玄とその三人の弟子・許攸(きょゆう)、婁圭(ろうけい)、王儁(おうしゅん)らと交遊をします。

父の後押しで、洛陽北部尉に仕官を果たした後も、曹操の波瀾万丈の物語が続きます。

厳しい言葉を投げながらも、曹操の資質を見抜いて、さまざまな形で息子を庇護しようとする曹嵩をはじめ、曹操の周りにはさまざまな形で彼を愛する者たちが登場します。

500ページを超える長編の第1巻は、十一歳から二十代前半まで、三国志のヒーローの知られざる青春時代を取り上げています。
めくるめく冒険と恋、苦悩と蹉跌と成長が、宦官がはびこり衰退に向かう後漢王朝の歴史とともに活写されています。

さらに、『論語や』『孫子』だけでなく、当時の教養である『詩経』、詩作が得意な曹操の詩なども随所に取り上げられていて、格調高く物語を綴られていき、どっぷりと中国物語世界に浸ることができます。
ああ、早く第2巻も読みたいです。

曹操 卑劣なる聖人 一

王暁磊
後藤裕也監訳・岡本悠馬訳
曹操社発行・はる書房発売
2019年11月15日初版第1刷発行

装丁者:大谷昌稔
装画者:菊馳さしみ

●目次
第一章 突然の政変
第二章 帰郷
第三章 四年ぶりの帰洛
第四章 袁紹との出会い
第五章 決死の救出
第六章 父の計らい
第七章 仕官前夜の人殺し
第八章 官となる
第九章 このうえない導き
第十章 洛陽で名を馳せる
第十一章 都を逐われる
第十二章 赴任途上の危機
第十三章 職務に励む
第十四章 一門免職
第十五章 曹家の没落
第十六章 皇帝の一声で返り咲く

主な登場人物
主な官職
後漢時代の地図
後漢時代の司隷の地図/後漢時代の冀州、青州、兗州、豫州、徐州の地図
本文522ページ

Wang Xiaolei “Beibi de shengren: Cao cao di 1 juan” (C)Shanghai dookbook publish company, 2011

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『曹操 卑劣なる聖人 一』(王暁磊・後藤裕也監訳・岡本悠馬訳・曹操社発行・はる書房発売)
『曹操 卑劣なる聖人 二』(王暁磊・後藤裕也監訳・岡本悠馬訳・曹操社発行・はる書房発売)

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