花と火の帝 上・下
(はなとひのみかど・じょうげ)
隆慶一郎
(りゅうけいいちろう)
[伝奇]
★★★★☆☆☆ [再読]
♪10年ぶりの再読になる。隆さんの作品の中で、いちばん好きなので、とっておきの本にしている。初読のときは、話の先がとても気になったが、今回はこの未完のところが伝奇小説としての威力を倍加させているのに気付いた。
帝と柳生というテーマでは、五味康祐さんの『柳生武芸帳』(新潮文庫)が初代で、本書が二代目で、その息子がえとう乱星さんの『螢丸伝奇』(青樹社文庫)といったところか。
岩介が敵を次々に破りながらも、仲間に加えていくといった姿勢が、かつての少年ジャンプのヒーローものっぽくて痛快。でもやっぱり、もっと続きがよみたいよー。
物語●「鬼の子孫」といわれる八瀬童子の流れをくむ駕輿丁(かよちょう)岩兵衛の息子、岩介は、五歳のときに天狗と出会い、弟子入りするために故郷を離れた。その岩介が十一年ぶりに帰ってきた。岩介は、三宮政仁親王(後の後水尾天皇)と出会い、「途轍もない一生を送」るであろうことが予測されて、一生従うことに決める。そのころ、徳川幕府は、さまざまな形で公家と天皇に干渉しはじめた…。
目次■騒乱/官女密通/御譲位/和子入内(以上上巻)|和子入内(つづき)/御譲位まで/仙洞御所/解説 浦田憲治/文庫版解説 縄田一男(以上下巻)