2023年時代小説SHOWベスト10、発表!

椿山

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椿山椿山
(つばきやま)
乙川優三郎
(おとかわゆうざぶろう)
[短編]
★★★★

わずか2作品ながら、時代小説界で大いに嘱望される気鋭の小説家・乙川さんの初の短編集(正確に言えば、表題作は中編)。『喜知次』で、直木賞候補になっているだけに、今回、文藝春秋から単行本を出されたことで、直木賞にぐっと近づいたのではないだろうか。

「ゆすらうめ」女の強さと哀しさをギュッと凝縮したスペースで描ききっている。「白い月」市井ものの傑作。「花の顔」嫁と姑の確執、怖い話ながら…。「椿山」もう少し読みたい気にさせる。結末を急ぎすぎた感じもするが…。

どの作品も精緻な中に緊張感があるものに仕上がっていて、作者の資質の確かさがうかがえる。乙川さんの本を読んでいると、山本周五郎さんの本が無性に読みたくなってしまう。

物語●「ゆすらうめ」六年の年季が明け、色茶屋を出て行く娼妓おたかを見つめる番頭孝助の願い…。「白い月」苦難の末に、錺師(かざりし)・友蔵と夫婦となったおとよを悩ます夫の悪癖…。「花の顔(かんばせ)」出世のために、家庭を顧みず江戸詰めを続ける夫。留守を守る嫁と義母の確執…。「椿山」城下の子弟が集まる私塾・観月舎(かんげつしゃ)で知った身分の不条理。才次郎はある決意を固める…。

目次■ゆすらうめ|白い月|花の顔(かんばせ)|椿山

写真:福原路草
装幀:菊地信義
場所:「ゆすらうめ」江戸近郊のとある遊郭。「白い月」深川半町、永代橋、照降町。
(文藝春秋・1,238円・98/12/10第1刷・230P)
購入日:98/12/05
読破日:98/12/31

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