宗旦狐―茶湯にかかわる十二の短編(5)

宗旦狐―茶湯にかかわる十二の短篇 (徳間文庫)』を読了する。表題作の宗旦以外は千家の人々は登場しないが、茶の湯にまつわるものや人に題材をとった佳品ばかり。澤田ふじ子さんの作品の美質が表れた短篇集。「仲冬の月」で描かれた「利休七哲」の一人、瀬田掃部が今までスポットの当たることのなかった人物だけに印象深かった。

狭苦しい茶室で、さまざまなうるさい約束事にとらわれ、苦い茶を服することにどんな意味があるのか、問われた瀬田掃部は、

「なるほどそのことか。太閤秀吉さまのご家来衆のおもな人々は、みんな茶湯を行っているわなあ。だがそれについて、わしはこんな気持ちでしていると語っておられるお人はいないからのう。長吉、わしは要するに、利休さまが唱えられている茶湯は、宿業をそなえた人間がいかに生きていくかを、それでしめしたものじゃと解している。しかし、茶湯を行うにしても、はっきりした考えをもっておられるお人は少なかろう。ほとんど俗世への格好だけじゃ。名物道具は、金や力がなければ入手できまい。持てば人の扱いがちごうてくる。具体的にはわしは緊張を解きほぐすために茶湯を行っている。…」

作者の茶湯観がよく出ているシーンである。

利休の高弟で武将を「利休七哲」という。蒲生氏郷(がもううじさと)、細川三斎(ほそかわさんさい・忠興)、高山右近(たかやまうこん)、芝山監物(しばやまけんもつ)、牧村兵部(まきむらひょうぶ)、古田織部(ふるたおりべ)、瀬田掃部(せたかもん)をいうが、織田有楽斎(おだうらくさい)を加えることもある。

利休七哲の武将たちは、いずれもその生き様と死に様に筋が通っていて、さすが優れた茶人でもあると思わせる。岳宏一郎さんの『花鳥の乱―利休の七哲 (講談社文庫)』では、織田有楽斎に加えて、荒木村重と前田利長が入っている。茶人としてより武将としての面にスポットを当てた作品だっただけに、史実が少ない芝山監物や牧村兵部、瀬田掃部より、描きやすかったからかもしれない。

花鳥の乱―利休の七哲 (講談社文庫)

花鳥の乱―利休の七哲 (講談社文庫)