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商いに奮闘する姉と嫁入りする妹、ふたりの道を歩む看板姉妹

『ふたりの道 小間もの丸藤看板姉妹(五)』|宮本紀子|時代小説文庫

ふたりの道 小間もの丸藤看板姉妹(五)宮本紀子さんの文庫書き下ろし時代小説シリーズの最終巻、『ふたりの道 小間もの丸藤看板姉妹(五)』(時代小説文庫)を紹介します。

日本橋伊勢町にある小間物商の大店「丸藤」には、店に立つ姉の里久と伊勢町小町と呼ばれる美人の妹・桃の看板姉妹がいました。
「小間もの丸藤看板姉妹シリーズは、若い二人が仕事に情熱を注ぎ、恋に胸を焦がしていく、胸キュンの大江戸ガールズ時代小説です。

残暑の頃。小間物商「丸藤」の手代として信頼厚い吉蔵が、実家の味噌屋の主となるため、店を去る」ことになった。吉蔵を敬愛する総領娘の里久は、動揺を隠せない。吉蔵は主・藤兵衛に、「私の次の手代は里久お嬢さんに」と進言。今まで自らが丸藤で培ってきたすべて、商人としての自覚と自信を里久に教えこむことを、最後の奉公とさせてほしいと頭を下げる。商いに向き合う里久の奮闘、妹・桃の嫁入り、そして里久の縁談……成長した看板姉妹の物語、感動のシリーズ完結篇。

(カバー裏の説明文より)

お客の油問屋のご新造さんに対する、小間物商「丸藤」の手代吉蔵の行き届いた接客ぶりに感動し、はしゃぐ里久。
ところが、吉蔵に実家の味噌屋を主人にという話が持ちかけられて、悩んだ末に家業を継ぐ決心をしました。

「里久お嬢さんは成長なさいました。よろこばしいかぎりでござます。あと補うものがあるとすれば、それは、ひとりの商人としての自覚と、自信でございます」
「商人としての自覚と、自信――」
 主人と番頭の重なった声に、吉蔵は大きくうなずいた。

(『ふたりの道 小間もの丸藤看板姉妹(五)』P.31より)

吉蔵は主人の藤兵衛から里久を店に立たせると聞いたとき、驚きしかなく、お遊びで長くは続かないと思っていました。
ところが、里久の頑張りは想像以上で、おまけに商いの才に長けていて、吉蔵が目を見張ったのも一度や二度ではなく、今では丸藤になくてはならない存在になっていたと。

そして、吉蔵は、自分の知ることすべてを里久に教えてから丸藤を退きたいと告げました。

しかし、藤兵衛から吉蔵が店を辞めることを知らされた里久は、その事実を受け止めることができず、自分に手代の任を担え、吉蔵と同じぐらいになれということに「無理だよ、無理。そんなの、ぜえったい無理だから!」と悲鳴の声を上げました。
そして、翌日、里久は主人や番頭の許しもなく店を休み、池の水替えをして一日庭で過ごしました。

「わたしはね、手代の任を負うのが嫌で店に出なかったんじゃないよ。吉蔵がここにいてくれるというなら、どんな任だって引き受けるよ。だから」
「人が生きていく道は、一本道ではございませんでしょう」
 夜の店に吉蔵の声が静かに響いた。
「誰しもがどこかで分かれ道がございます」

(『ふたりの道 小間もの丸藤看板姉妹(五)』P.46より)

夜の店で、吉蔵と話したことで、里久は吉蔵の商いの指南を素直に受けることになりました。

大店でありながら、看板姉妹の里久と桃をはじめ、主人の藤兵衛と内儀の須万、番頭に手代まで、登場人物たちがときには熱く感情をぶつけ、また、あるときは大切な相手のことを思慮する、その心と行動の動きが美しく、読んでいてキュンキュンする時代小説です。

今回、完結篇となります。里久と桃は、どんな道を歩み出すのでしょうか?
読み終わった後、きっと二人の選んだ道を応援したくなるでしょう。

ふたりの道 小間もの丸藤看板姉妹(五)

宮本紀子
角川春樹事務所・時代小説文庫
2022年8月18日第一刷発行

装画:おとないちあき
装幀:アルビレオ

●目次
第一章 別れ
第二章 ひとりだち
第三章 耕之助の望み
第四章 桃の覚悟
第五章 里久の恋
第六章 将来
第七章 ふたりの道
第八章 看板姉妹

本文251ページ

書き下ろし

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『跡取り娘 小間もの丸藤看板姉妹』(宮本紀子・時代小説文庫)
『妹の縁談 小間もの丸藤看板姉妹(二)』(宮本紀子・時代小説文庫)
『寒紅と恋 小間もの丸藤看板姉妹(三)』(宮本紀子・時代小説文庫)
『雛のころ 小間もの丸藤看板姉妹(四)』(宮本紀子・時代小説文庫)
『ふたりの道 小間もの丸藤看板姉妹(五)』(宮本紀子・時代小説文庫)

宮本紀子|時代小説ガイド
宮本紀子|みやもとのりこ|時代小説・作家 京都府生まれ。市史編纂室勤務などを経て、2012年、「雨宿り」で第6回小説宝石新人賞を受賞してデビュー。 ■時代小説SHOW 投稿記事 ...