オタクを嗤うな! アニメ関係者への犯行を阻止せよ

『脳科学捜査官 真田夏希 パッショネイト・オレンジ』

脳科学捜査官 真田夏希 パッショネイト・オレンジ鳴神響一(なるかみきょういち)さんの文庫書き下ろし現代ミステリー、『脳科学捜査官 真田夏希 パッショネイト・オレンジ』(角川文庫)を献本いただきました。

本書は、神奈川県警で心理職特別捜査官をつとめる、真田夏希が凶悪な事件に遭遇して活躍する警察小説「脳科学捜査官 真田夏希」シリーズの第6弾。
時代小説で活躍されている著者による、「令嬢弁護士桜子」シリーズと並ぶ、現代ミステリーの最新刊です。

京都アニメーションの事件発生から、7月18日で一年が経過しました。
私自身、(時代小説オタクで)取り立ててアニメファンというほどではありませんが、テレビや新聞などでの報道で、事件で犠牲になられた方ひとり一人に対して、あらためて悲しみと悔しさなど、追悼の思いが募りました。

テレビ局のアニメ・プロデューサーが鎌倉の自宅付近で何者かに殺害された。次の日、「贖罪幽鬼」を名乗る者から県警本部に犯行声明が投稿され、さらに番組関係者への犯行予告が続けて送られてきた。捜査本部に招集された神奈川県警の心理職特別捜査官の真田夏希は、メールを通じて交渉を試みるが、犯人は強硬な姿勢を崩さず、番組関係者への殺意を剥き出しにしていた。第2の殺人を阻止するため、夏希は捜査を開始するが――。
(本書カバー裏紹介より)

真田夏希は、本部鑑識課の小川から、《オレンジ☆スカッシュ》のコンサートに誘われました。

オレンジ☆スカッシュは、杏奈、ゆん、咲良、朋花の二十歳前後の声優からなる、四人組のガールズユニット。ドーベルマンの警察犬アリシア以外の女性には興味がないと思っていた小川からの誘いに興味をもち、夏希はコンサートにつき合うことにしました。

ところが、オレンジ☆スカッシュとファンたちの不思議なコール&レスポンスに奇異を感じた夏希は、小川と気まずい雰囲気となりました。

会場を出た二人の前に、刑事部根岸分室の上杉が現れ、夏希は、上杉が単身で捜査を始めた鎌倉の殺人現場への見分に誘われました。

現場は、鎌倉の縁結びの神様として知られる、葛原岡(くずはらおか)神社の近くの崖を下りるコンクリートの急な階段。前日の夜遅くに、鬼才と称された、テレビ局のアニメ・プロデューサー蜂須賀至郎が突き落とされて殺されました。

葛原岡神社は、後醍醐天皇の忠臣として鎌倉幕府倒幕に活躍した日野俊基卿を祀る神社です。俊基卿が悲劇の最期を迎えた地に、明治20年に創建されました。

 ――アニメ化された『僕の妹は真夏の夜には夢を追わない』の主役、多賀マリンの扱いが原作小説と大きく違って許せません。マリンは俺の嫁です。俺の心を踏みにじった制作者たちに天罰を与えます。次の鉄槌を待っていてください。  贖罪幽鬼

(『脳科学捜査官 真田夏希 パッショネイト・オレンジ』P.61より)

県警の投稿フォームに贖罪幽鬼と名乗る者から犯行声明と犯行予告が届きました。

捜査本部に招集された夏希は、アイドルオタクで警備部の小早川管理官から、『僕の妹は真夏の夜には夢を追わない』が百万部のベストセラーとなったライトノベルをアニメ化したもので、マリン役の声優にゆんが抜擢されたほか、杏奈らオレンジ☆スカッシュの他のメンバーも出演していると説明されました。

いつものように、「かもめ★百合」のハンドルネームをもつ夏希が贖罪幽鬼へメールで呼びかけて犯人と連絡を取り始めます……。

今回は、かもめ★百合は、文字の応酬だけでなく、拡声器を通じた声でも活躍します。読みどころの一つです。

今どきなテーマ、スピーディーに展開するストーリー、視覚的な描写に引き込まれて、一気読みしてしまいました。

そして、夏希と同僚たちの息の合ったやり取りが何とも楽しく、夏希の魅力全開で楽しめました。

脳科学捜査官 真田夏希 パッショネイト・オレンジ

鳴神響一
KADOKAWA 角川文庫
2020年7月25日初版発行

文庫書き下ろし

カバー写真:Heng Yu/ EyeEm/ Getty Images, baytunc/ Getty Images
カバーデザイン:舘山一大

●目次
第一章 オレンジ☆スカッシュ
第二章 贖罪幽鬼
第三章 夏希のミラクル
第四章 真夏の夜の悲劇
第五章 演出者の末路

本文282ページ

■Amazon.co.jp
『脳科学捜査官 真田夏希 パッショネイト・オレンジ』(鳴神響一・角川文庫)(第6弾)
『脳科学捜査官 真田夏希』(鳴神響一・角川文庫)(第1弾)

鳴神響一|時代小説ガイド
鳴神響一|なるかみきょういち|時代小説・作家 1962年、東京都生まれ。中央大学法学部卒。 2014年、『私が愛したサムライの娘』で第6回角川春樹小説賞を受賞してデビュー。 2015年、同作品で第3回野村胡堂文学賞を受賞。 ■...