台風で思い出す時代小説は?

台風11号が関東地方に近づいてきた。雨が強くなってきたが、何となくわくわくさせるものがある。時代小説で、台風は野分(のわき)と呼ばれていたが、嵐のシーンが印象に残る作品は意外に少ない。

そんな中で海洋小説と呼ばれる、海を舞台に活躍した物語では、台風はドラマティックな役割を演じることがある。徳川幕府は大船の建造を禁じ、そのうえ外国船のように甲板を水密に張ることを許さず、危険な一本帆柱での航海を強いてきた。そのために多くの船乗りが難船し、海の藻屑と消えてきた。漂流したり、全財産を失い借金だけが残るという過酷な運命に見舞われることも少なくない。二宮隆雄さんの『風炎の海』は漂流を描いた感動的な作品の一つである。

目を陸に向けると、藤沢周平さんの『蝉しぐれ (文春文庫)』の洪水のシーンがやはり印象に残る。この秋、映画「蝉しぐれ」が上映される。野分が描かれるのかどうか気になるところだ。

風炎の海

風炎の海

蝉しぐれ (文春文庫)

蝉しぐれ (文春文庫)