2016年の時代小説ベスト10・文庫/単行本を公開

「時代小説SHOW」の2016年時代小説ベスト10の【文庫書き下ろし部門】【単行本部門】を公開しました。

落ちぬ椿 上絵師 律の似面絵帖【文庫書き下ろし部門】のベスト3は、
1位 『落ちぬ椿 上絵師 律の似面絵帖』 千野みさき 光文社・光文社文庫
2位 『素浪人半四郎百鬼夜行』 シリーズ 芝村凉也 講談社・講談社文庫
3位 『虫封じ〼』 立花水馬 文藝春秋・文春文庫

です。
4位以下は→こちら

【単行本部門】のベスト3は、
1位 『家康、江戸を建てる』 門井慶喜 祥伝社
2位 『室町無頼』 垣根涼介 新潮社
3位 『くせものの譜』 箕輪諒 学研プラス

です。
4位以下は→こちら

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永徳、等伯に続く、桃山時代最後の巨匠海北友松の生涯を描く

墨龍賦葉室麟さんの歴史時代小説、『墨龍賦(ぼくりゅうふ)』がPHP研究所から刊行されました。

海北友松(かいほうゆうしょう)は、近江の大名浅井長政の家臣の子に生まれながらも京の東福寺に入れられ、絵師になった。若き日の安国寺恵瓊と好誼を結び、明智光秀の側近斎藤内蔵助利三と出会い、友情を育んでいく。
そんな折、浅井長政が織田信長に滅ぼされ、海北家も滅亡する。そして本能寺の変……。命を落とした友のために友松がとった行動とは。


本書は、桃山時代に活躍した絵師・海北友松の生涯を描いた長編歴史時代小説です。
友松は、浅井長政に仕えた海北善右衛門綱親の三男として天文二年(1533)、近江国坂田郡に生まれました。父・綱親は、雨森弥兵衛、赤尾孫三郎とともに小谷三人衆と呼ばれた勇猛な武者として知られていました。

宋元画の影響を受けた水墨画が多く、代表作の一つ、建仁寺の「雲龍図」は、本書の装画に使われています。

 友松はじっと絵を見つめてつぶやく。
「還俗させぬ、と言われれば還俗せずにいられなくなる。絵師にはなれぬと言われればなってみせたくなる。皆、わたしのことをわかってはおらぬようだ」
(『墨龍賦』P.21より)


友松と同時代の絵師というと、狩野永徳(1543年生まれ)や長谷川等伯(1539年生まれ)が著名です。

永徳を主人公にした作品では、山本兼一さんの『花鳥の夢』や谷津矢車さんの『洛中洛外画狂伝―狩野永徳』があります。
一方、等伯を描いた時代小説の代表作には、安部龍太郎さんの『等伯』や萩耿介(はぎこうすけ)さんの『松林図屏風』があります。

本書と読み比べてみると、信長、秀吉の時代に、絵に命を賭けた男たちの世界が楽しめます。

2017年4月11日より、京都国立博物館で海北友松展が開催される予定。

■Amazon.co.jp
『墨龍賦』

『花鳥の夢』(山本兼一・文春文庫)
『洛中洛外画狂伝―狩野永徳』上(谷津矢車・学研M文庫・Kindle版)
『等伯』上(安部龍太郎・文春文庫)
『松林図屏風』(萩耿介・日本経済新聞出版社)

開館120周年記念特別展覧会 海北友松|京都国立博物館


『オール讀物』2016年2月号は、没後二十年「藤沢周平の美学」特集

『オール讀物』2017年2月号『オール讀物』2017年2月号(文藝春秋)で、没後二十年総力特集「藤沢周平の美学」 をやっていて入手しました。

早いもので、1997年1月26日に逝去されてから、二十年が経つのですね。
一人娘の遠藤展子さんと阿川佐和子さんの対談や、「藤沢周平の旅路」の記事を通して、創作の秘密とともに、家族の中での藤沢周平さんの姿が目に浮かんできて、懐かしくなりました。

1971年、第38回オール讀物新人賞を受賞し直木賞候補になった、短編小説「溟い海(くらいうみ)」も収録されています(文庫では『暗殺の年輪』に収録)。
晩年の葛飾北斎を描いたこの作品は、時代小説家として確固たる一歩を踏み出した記念碑的な作品です。
早速、再読しました。

山口恵以子さんや川井郁子さんら各界の著名人が語る、藤沢周平「私の一冊」は、読者目線で藤沢作品の魅力が伝わってきます。

今年、没後二十年、生誕九十年ということで、さまざまな記念出版や企画が行われます。
映画化『一茶』創作のたくらみの記事によると、藤沢周平原作の評伝小説『一茶』がリリー・フランキーさんの主演で夏に公開を予定されるいうことで楽しみです。

藤沢作品の装画を多数手がけてきた画家の蓬田やすひろさんの話を読み、鶴岡市立藤沢周平記念館で開催されている「藤沢周平没後20年特別企画展〈藤沢作品の世界〉」へもますます行きたくなりました。

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『オール讀物』2017年2月号
『暗殺の年輪』
『一茶』

⇒鶴岡市立藤沢周平記念館
⇒『オール讀物』|文藝春秋

浅間山大噴火前年の怪異探索行と、噴煙に消えた素浪人

素浪人半四郎百鬼夜行(拾遺) 追憶の翰芝村凉也(しばむらりょうや)さんの文庫書き下ろし時代小説、『素浪人半四郎百鬼夜行(拾遺) 追憶の翰(ついおくのかん)』が講談社文庫から刊行されました。

火を吐く浅間山で身を挺して闘った榊半四郎と、謎の老人・際野聊異斎、小僧の捨吉の三人組の生死は杳として知れない。
浅間山大噴火の前年、半四郎は聊異斎に誘われて、捨吉と三人で、江戸以外の地の怪異を調べるために、関八州の旅に出る。最初に向かったのは、下総国の寒川村の漁村だった。
船幽霊が出て、出漁していたその村の漁師が戻らず死体も浜に打ち上げられないことが、三度続いたという……。


本書は、「素浪人半四郎百鬼夜行」シリーズの10作目にして、完結編になります。巻名に付されている、「拾遺」というのは、漏れ落ちている事柄や作品を拾い補うこと。「翰(かん)」には、筆または筆で書いたものという意味があります。
前作『終焉の百鬼行』で壮大なスケールで日本滅亡の危機に立ち向かう半四郎の奮闘を綴っていて、気になるのは噴煙の向こうに消えた三人組の行方です。

今回、物語は噴火の前年にさかのぼります。
下総国の漁村に出没する船幽霊や、下野国の平家の落人集落の異神といった怪異探索の旅が綴られていきます。
これまで取り上げられなかったエピソードを挿入することで、三人組への追憶と喪失感が高まり、最終話「桃源郷」へ。

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『素浪人半四郎百鬼夜行(拾遺) 追憶の翰』
『素浪人半四郎百鬼夜行(一) 鬼溜まりの闇』


「2017年1月の新刊 下」をアップ

秀吉を討て2017年1月21日から1月31日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2017年1月の新刊 下」を掲載しました。

武内涼さんの、『秀吉を討て』が角川文庫から刊行されます。

根来の若き忍び・林空は、総帥・根来隠形鬼に呼び出され「秀吉を討て」と命じられる。林空は仲間とともに、家康との合戦のため、甲賀忍者・山中長俊らの鉄壁な守りに固められた秀吉を銃撃しようとするが……。


『妖草師』が、「この時代小説がすごい! 2016年版 文庫書き下ろし部門」で1位となり、注目される時代小説家武内涼さんの戦国エンターテインメント小説が文庫化されます。

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『秀吉を討て』
『人斬り草 妖草師』(徳間文庫)

→2017年1月の新刊 下