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江戸打入り

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江戸打入り

江戸打入り

(えどうちいり)

半村良

(はんむらりょう)
[武家]
★★★★☆

八月一日を、家康が江戸打入り(討入りではない、打ちは強調の接頭辞か)した日として、八朔(はっさく)と呼び、江戸の市民の祝日していた。この本の発行日も八月一日にあわせている。

その由来がわかる、非常に興味深い一冊だった。三河武士たちがどんな思いをもって、故郷を離れ、江戸に移封されてきたのかを一人の純朴な若者を通して描いている。手垢のついていないユニークな題材で新鮮だ。

江戸時代になれてしまったせいか、国替えを当たり前のこと(ちょうど転勤のように)と思いがちだが、秀吉以前は、武士も土着していたために、ほとんど国替えはなかったのだ。

読んでいる途中で、主人公の鈴木金七郎が、イチロー選手の祖先かもしれないと思えてしまう。また、権謀術策で腹黒い爺として扱われることが多い本多佐渡守が存外いいひとに描かれていたのが面白い。

物語●父をはじめ兄5人を戦で亡くした鈴木金七郎は、五人の後家と暮らしていた。秀吉の小田原攻めに巻き込まれ、叔父の組する家康の旗本深溝松平家忠家中の夫丸(ぶまる=戦に加わらない雑兵)を務めることになる…。金七が戦死することを恐れた家族や親戚たちの配慮も、やがて…。

目次■三河の風/浅黄の隊列/富士の白雪/棕櫚と舟橋/江尻馬揃え/関白御成橋/茶屋と禅僧/小田原の春/虎口の番人/疑惑の総攻撃/江戸打入り

装画:村上豊
装丁:岡邦彦
三河方言指導:清水義範
時代:天正十八(1590)年
場所:足助(あすけ)、深溝(ふこうず)、金谷、富士川、小田原、江戸汐見坂
(集英社・1800円・97/8/1第1刷、376P)
購入日:97/8/5
読破日:97/9/21

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