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宵越しの銭を持たない――江戸の祭り、富くじ、色街、御開帳

『大江戸の娯楽裏事情 庶民も大奥も大興奮!』|安藤優一郎|朝日新書

大江戸の娯楽裏事情 庶民も大奥も大興奮!歴史家、安藤優一郎さんの歴史読み物、『大江戸の娯楽裏事情 庶民も大奥も大興奮!』(朝日新書)をご恵贈いただきました。

『江戸の旅行の裏事情』など、江戸に関する歴史読み物を多数発表している著者が、江戸っ子の娯楽である、祭り、富くじ、色街、寄席、芝居、御開帳などについて、分かりやすく解説する江戸の入門書です。

娘や女房を遊所に売っても、「祭りだ、祭りだ!」
四千円の元手で億万長者に! しかも二日に一人!
祀り、富くじ、芝居に吉原、御開帳!
百万都市・大江戸は、朝も昼も夜も……眠れない!

「飲む・打つ・買う」に興奮し、歌舞伎役者にのめり込む。
庶民だけではない。将軍様も大奥の女性たちも、
こんなに楽しんでいた。「ええっ?」という話が満載。
江戸の消費経済を動かしていた娯楽産業の実態と、背景を解き明かす。

(本書カバー袖の紹介文より)

「宵越しの銭を持たない」は、粋な江戸っ子の気風を表す言葉です。
日々の稼ぎをその日のうちに使い切ってしまう江戸の町人のお気楽な行動を指しています。百万都市江戸には、稼ぎを注ぎ込んでしまう娯楽に溢れていました。

頻発する火事のため、一夜にして家財全てを失う恐れがあったことのほかに、当時は、庶民を対象に、銀行や郵便局などの金融機関に貯金するという制度はなかったことも、宵越しの銭は持たないという消費行動を産んだ理由と考えられます。

本書では、富くじ、飲む・打つ・買う、寄席と歌舞伎、祭り、御開帳という、五つの視点から、主に庶民を中心に江戸の娯楽事情の裏側を解き明かしていきます。

たとえば、「第一章 「大当たり!」江戸の宝くじ 人気過熱の富興行」では、文政八年(1825)には三カ月で四十五カ所の富突興行が行われ、二日に一人億万長者が生まれていたことになります。

江戸後期の風俗史家の喜田川守貞の『近世風俗志』から引用して、一獲千金を夢見て、千両の富が当たっても、実際には七百両ほどしか手中にできなかったとされています。

 千両のうち、一割の百両は主催者の寺社に修復料として奉納したという。富突の多くは修復費の捻出という理由で許可されたのだから、その趣旨に沿って一割を奉納させたのである。
 札屋に百両渡す(頒ち)とは、次回の富突で販売される札を百両分購入することを意味しており、また百両が差し引かれた。さらに、諸費として四十~五十両が差し引かれている。これは興行に関わる経費だろう。
 
(『大江戸の娯楽裏事情 庶民も大奥も大興奮!』P.78より)

いわゆる鎖国のため内需依存の閉じられた江戸社会では、百万都市の過半を占めた庶民が娯楽・遊興に使った金銭は、個々にとっては少額でも、積み重ねられて、江戸の消費経済を動かす強大な力になり、大江戸の繁栄を支える原動力になったものと思われます。

吉原と岡場所の集客方法や、高級料亭八百善のお茶漬け一杯が十数万円だった理由とは? 江戸っ子の感覚が分かると、時代小説ももっと楽しくなります。

大江戸の娯楽裏事情 庶民も大奥も大興奮!

安藤優一郎
朝日新聞出版 朝日新書
2022年7月30日 第1刷発行

カバーデザイン:アンスガー・フォルマ― 田嶋佳子

●目次
プロローグ――銭を持たない江戸っ子の誇り
第一章 「大当たり!」江戸の宝くじ 人気過熱の富興行
(1)二日に一人が「億万長者」
(2)当選金の泣き笑い
(3)御免富の舞台裏
第二章 「飲む・打つ・買う」の泣き笑い 歓楽街に咲いた、あだ花
(1)グルメ・ブーム到来
(2)「こんなものにまで?」バラエティーに富んだ賭け事の横行
(3)江戸四宿、深川、吉原――色街の激しい生存競争
第三章 粋な男女で寄席と歌舞伎は大賑わい
(1)寄席の激増と意外な客層
(2)女性を夢中にさせたファッションリーダー
(3)天保改革という受難
(4)江戸城内で能を楽しんだ町人たち
第四章 大奥も大喜び、江戸の祭り 将軍様も楽しんだ非日常空間
(1)神輿深川、山車神田、だだっ広いは山王様
(2)江戸の華・天下祭りのスタイル
(3)祭礼番附とう名の台本とリハーサル
(4)祭礼当日の喧騒と江戸入場
第五章 開帳という大規模イベントの裏表 成功と失敗の法則
(1)「出たとこ勝負」の御開帳
(2)娯楽と話題作りに頼った集客戦略
(3)大奥での出開帳
(4)開帳の大スポンサーだった江戸の豪商
あとがき
参考文献

本文223ページ

■Amazon.co.jp
『大江戸の娯楽裏事情 庶民も大奥も大興奮!』(安藤優一郎・朝日新書)
『江戸の旅行裏事情 大名・将軍・庶民 それぞれのお楽しみ』(安藤優一郎・朝日新書)

安藤優一郎|著作ガイド
安藤優一郎|あんどうゆういちろう|歴史家 1965年、千葉県生まれ。歴史家。文学博士。 早稲田大学教育学部卒業、同大学院文学研究科博士後期課程満期退学。 主に江戸をテーマとして執筆・講演活動を展開。 ■時代小説SHOW 投稿記...