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春秋の檻 獄医立花登手控え1

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春秋の檻 獄医立花登手控え1
春秋の檻 獄医立花登手控え1

(しゅんじゅうのおり ごくいたちばなのぼるてびかえ1)

藤沢周平

(ふじさわしゅうへい)
[市井]
★★★★☆ [再読]

藤沢周平さん死去のショックから立ち直って最初に読んだのがこの本。藤沢作品にハマッたのもこの本からでした。7年ぶりぐらいで再読するが、筋をほとんど覚えていないのに我ながら呆れた。

牢獄が舞台になっていながら、読後に不思議な清涼感がある作品。

主人公の立花登は、羽後亀田藩の微禄の下士の次男で、医学を修め三年前に叔父小牧玄庵を頼って江戸へ来る。しかし、頼みの叔父ははやらない町医で、家計と酒代を補うために小伝馬町の牢医者をつとめていた。そんわけで、登は居候扱いで、叔母松江やその娘おちえにも軽く見られていた。やがて、叔父の代わりに代診をしたり、獄医を勤めることになる。ストレス解消は、起倒流鴨井道場での柔術の稽古。

暗くなりがちなテーマの中で、怠け者で酒好きの叔父、不良娘おちえと高慢ちきな叔母と登の家族模様がユーモラスさを醸し出している。最後におちえが、牢破りを企む一味に誘拐される事件がハイライト(「牢破り」)。

物語●島送りになる若者の頼みごと(「雨上がり」)。無実を訴える男の正体(「善人長屋」)。新入りの女囚は三年前に登がはじめてことばを交わした女だった(「女牢」)。御家人毒殺未遂の真相(「返り花」)。牢問でしゃべると女房が殺されると言っていた男が殺された(「風の道」)。恋人を刺した女囚の愛憎(「落葉降る」)。さまざまな暗い人間模様が江戸小伝馬町の牢屋に持ち込まれる小さな罪の背後にうごめく大きな悪。心やさしい青年獄医立花登が市井の人情も細やかに、柔術の妙技と推理の冴えを見せて事件を解く時代連作。

カバー装画:小沢良吉
解説:尾崎秀樹
時代:特定されず。江戸後期。化成期か?
(講談社文庫・500円・1982/05/15)
購入日:1997/02/20
読破日:1997/02/25

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