時代小説●文庫新刊情報|2025年9月中旬の新刊(11日→20日)
2025年9月11日から9月20日にかけて文庫で発売される時代小説の新刊情報をお届けします。おすすめの新刊の紹介文は、Amazonの内容紹介より抜粋・編集しています。各タイトルには、Amazon.co.jpの詳細紹介ページへのリンクを設定しています。 →新刊情報リストを見る
時代小説文庫
赤神諒さんの『戦神(いくさがみ)』
戦国の世に、宿命を背負って生まれた戸次八幡丸。彼は、父・戸次親家が主君・大友親治の愛息を死なせた罪により、死に追いやられた母の腹から取り出された子であったため、「鬼の子」と呼ばれていました。幼い頃から北九州で戦の才を発揮した八幡丸は、戸次鑑連と名を改め、やがて大友最強の将と称されるようになります。
その壮絶な生い立ちとは裏腹に、数多くの家臣に囲まれ、最愛の女性・お道を妻に迎えて幸せな日々を送る鑑連でしたが、過酷な運命が彼を待ち受けていました。後の立花道雪を主人公とする、傑作歴史小説の待望の文庫化です。
芦辺拓さんの『蝦夷大王の秘宝 お江戸三爺からくり帖』
『南総里見八犬伝』で人気を博した作家・曲亭馬琴のもとに、ある日、謎めいた暗号文が持ち込まれます。一方、旧知の画家・葛飾北斎もまた、不可思議な絵の依頼を受けていました。それはいずれも、松前藩が秘蔵するという宝にまつわる陰謀と深く関わっているようです。
馬琴と北斎、さらに鶴屋南北。江戸を代表する三人の文人が複雑に絡み合いながら繰り広げる波瀾の物語。明かされる驚愕の真相やいかに。本格ミステリの奇才が満を持して放つ、書き下ろしの時代伝奇推理長編です。
幻冬舎文庫
和泉桂さんの『美しき監獄の方程式』
時は大正、日本一美しいと称される奈良監獄。そこに投獄されたのは、教え子殺しの冤罪で捕らえられた元数学教師・弓削でした。
彼は、殺人と放火の罪で無期懲役刑を受けた印刷工・羽嶋と出会い、彼もまた冤罪であることを知ります。弓削は羽嶋と共に脱獄を決意します。「監獄は人が作ったものにすぎない」。頭脳明晰な弓削と、瞬間記憶能力を持つ羽嶋による脱獄劇の行方は――。友情燃ゆる究極のブロマンス・ミステリーです。
コスミック時代文庫
麻宮好さんの『震える羊羹舟 おけいの戯作手帖【二】』
「見えない人の心を戯作で表現したい」。そんな決意を胸にする戯作者の孫娘・おけいは、次回作の題材探しに苦しんでいました。そんな折、版元で想い人の勘助に誘われ、菓子競べに参加します。
そこで、羊羹舟と呼ばれる菓子の型が宙を舞うという、奇怪な現場に出くわすのです。弟・幸太郎の「付喪神ではないか」という言葉から、おけいは羊羹舟に秘められた想いを探ろうとします。やがて手がかりが加賀にあると知り、関係者を訪ね歩いたおけいは、一、二を争う菓子職人兄弟の葛藤と苦悩に辿り着きます。
増長してうまく話せなくなった幸太郎との関係を振り返りながらも、おけいは羊羹舟に込められた持ち主の想いを、筆に託して一気に書き上げるのでした。
集英社文庫
月村了衛さんの『十三夜の焔』
天明四年五月の十三夜。番方・幣原喬十郎は湯島の路上で、男女の惨殺死体を発見します。その傍らには、匕首を手に涙を流す若い男がひとり。咄嗟に問い質す喬十郎でしたが、隙を突かれて逃げられてしまいます。
やがて、その男が大盗「大呪の代之助」一味の千吉であることが判明。殺害された男の周辺を探る中で再び遭遇しますが、千吉は無実を訴えて姿を消します。
十年後、銭相場を巡る騒動で一家が殺害された塩問屋の事件を追う中、喬十郎は両替商となった千吉(利兵衛)と再会します。火付盗賊改長官・長谷川平蔵に助言を仰ぐも、思わぬ裏切りに遭って左遷されてしまう喬十郎。己の面目を懸けて悪事に立ち向かう喬十郎と、闇社会を巧みに渡り歩く千吉。幕政に翻弄された二人の因縁を描く、熱き時代小説です。
★2025/9/20追記
集英社文庫
北方 謙三さんの『チンギス紀 十二 不羈』
モンゴル国の鎮海城をあずかるダイルは、三千の守備兵を組織し、三つの砦に配置しました。領土は広がり、チンギス率いる十万の遠征軍は鎮海城とは逆の東方へと出撃しています。
一方、チンギスが滅ぼしたナイマン王国の元王子グチュルクは逃亡し、モンゴル国の西に位置する西遼の帝位を簒奪していました。西遼が数万の兵を動員できると考えたダイルは、その懸念を雷光隊を率いるムカリに打ち明けます。
また、南の潮州で暮らすタルグダイとラシャーンは、かつての部下ソルガフの遺児トーリオを我が子のように育て、自らの商いについて学ばせようとしていました。
急速に拡大する領土と広がる国境線を前に、チンギスはボオルチュと共に、戦況や物流など国の在り方について語り合います。
強者たちに異変が生じる、第十二巻です。
松井 今朝子さんの『愚者の階梯』
「勧進帳」は不敬である──。
昭和十年、東京。満州国皇帝・溥儀が来日し、亀鶴興行は奉迎式典で歌舞伎の名作「勧進帳」を上演しました。公演は無事成功しますが、台詞が不敬にあたると国粋主義者から糾弾されます。
脅迫状が相次いで届く中、亀鶴興行の関係者が舞台装置に首を吊った姿で発見されてしまいます。
江戸歌舞伎狂言作者の末裔・桜木治郎が大いなる謎に挑む、驚愕の“劇場×時代ミステリー”です。
日本があの戦争へと最後の舵を切った時代を彫刻する渾身の一作。『壺中の回廊』、第4回(2018年度)渡辺淳一文学賞受賞作『芙蓉の干城』に続く、昭和三部作の完結編です。
創元推理文庫
ジューン・ハーさんの『宮廷医女の推理譚』
悪意と陰謀が渦巻く宮廷を舞台に、王族の女性を診察する医女が謎解きに挑む、清新なミステリです。
1758年、朝鮮王朝期。18歳のベクヒョンは、王族の診察を担当する医女(イニョ)となりました。ある夜、彼女が医術を学んだ恵民署(ヘミンソ)で4人の女性が殺害される事件が発生します。捜査にあたった捕盗庁(ポドチョン)の役人は、不審な供述をしたベクヒョンの師を犯人と断定しました。
ベクヒョンは、捕盗庁で働く青年オジンの協力を得て、師を救うため独自に真相を探りはじめます。
聡明な医女が難事件に挑む、アメリカ探偵作家クラブ賞受賞の話題作です。
!おすすめ度
★:読みたい/入手したい
■:新装版/復刊
♪ :気になる/チェックしたい



