戦国を生き抜いた姫君たちを描く傑作アンソロジー

女城主 戦国時代小説傑作選文芸評論家の細谷正充さんの編集による時代小説アンソロジー、『女城主 戦国時代小説傑作選』がPHP文芸文庫より刊行されました。

収録作品は以下の通り。

「本多忠勝の娘」井上靖
義父真田昌幸と実父本多忠勝の二人の父に愛されて育てられた月姫(小松姫の名で知られる)。夫信之の出兵により、沼田城を守る女城主はある決断をする……。

「母の覚悟」岩井三四二
上州金山城を本拠とする小大名の由良氏は、ある事件を契機に北条氏に屈し、その配下に組み込まれていた。由良氏には当主国繁よりも頼りにされる女性がいた。先代藩主の妻で、国繁の母・妙印尼であった。秀吉の北条征伐の軍勢が迫る中で、妙印尼は、ある決断をする……。

「虎目の女城主」植松三十里
井伊直虎を描いた新作書き下ろし短篇。限られた字数の中で、直虎の波瀾に富んだ半生をストレートに描いています。NHK大河ドラマ放送前の予習に最適な一篇です。

「立花誾千代(たちばなぎんちよ)」滝口康彦
豊後の大友家の重臣・立花道雪(戸次鑑連)の娘で立花城の城督(城主)をつとめ、名将立花宗茂を婿養子に迎えた、誾千代(「誾」は門構えに言の字)の後半生を描いた短篇。本編で彼女に関心を持った方には、山本兼一の『まりしてん誾千代姫』がおすすめです。
「笄堀(こうがいぼり)」山本周五郎
作者の中では珍しい戦国時代を舞台にした作品。テーマは、和田竜さんの『のぼうの城』で有名になった忍城の籠城戦です。「笄堀」で面白いのは、籠城戦を率いたと言われる城主成田氏長の娘・甲斐姫ではなく、母親の真名女(まなじょ)に、主人公を据えている点。

「夫婦の城」池波正太郎
上州国峰城主小幡信定は関東管領上杉憲政の命で、箕輪城主長野業政(ながのなりまさ)の娘正子(せいこ)を娶った。上杉の勢力下にある小幡家にとって、城を、国を守るために、正子との間に男子を出生させることは欠くことのできない条件だった……。男女の機微と、正子が変貌していくさま、作者の巧みな描写で堪能できます。

戦国時代、井伊家滅亡の危機に、男の名で家督を継ぎ、徳川四天王の一人、井伊直政を育てた女城主・井伊直虎(次郎法師)をはじめ、民を愛し、城を守った姫君たちの凛として美しい姿を描いた傑作短篇集。

収録されている六編には、それぞれに個性的な女城主が登場し、動乱の時代に一瞬の光を放っています。女性を通して戦国の世を俯瞰してみるのも一興です。

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『女城主 戦国時代小説傑作選』
『まりしてん誾千代姫』(山本兼一・PHP文芸文庫)
『のぼうの城・上』(和田竜・小学館文庫)