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本所七不思議を題材にした傑作時代ミステリー

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誉田龍一(ほんだりゅういち)さんの『消えずの行灯 本所七不思議捕物帖』を読んだ。作者は、本書収録の表題作「消えずの行灯(きえずのあんどん)」で第28回小説推理新人賞を受賞している。

消えずの行灯―本所七不思議捕物帖 (双葉文庫)

消えずの行灯―本所七不思議捕物帖 (双葉文庫)

サブタイトルからもわかるように、本所七不思議(消えずの行灯、送り提灯、足洗い屋敷、片葉の芦、落葉なしの椎、置いてけ堀、馬鹿囃子)を題材にした連作形式の捕物小説である。本所七不思議というという、時代小説ファンには、宮部みゆきさんの『本所深川ふしぎ草紙』が有名であろう。同じ七話を取り上げているが、ウィキペディア(Wikipedia)』によると、本所七不思議には、「送り拍子木」や「津軽の太鼓」を取り上げる説もあるそうだ。

本所七不思議 - Wikipedia
本所深川ふしぎ草紙 (新潮文庫)

本所深川ふしぎ草紙 (新潮文庫)

嘉永六年(1853)、六月、浦賀に突如現れた黒船を見物に出かけた帰り、仁杉潤之助と友人の釜次郎は、本所の南割下水近くで、職人風の男が死んでいるのに出くわした。死体には、刃物傷も針の跡も見当たらず、首を絞められた形跡も殴られたり蹴られたりした青痣もなく、毒で吐血した跡もなかった。男がいたと思われる小屋には、十数本の竹が転がり、畳の上には荒縄や鉈、斧、鎌などが散らばり、他にひっくり返ったままの行灯と季節はずれの火鉢が置かれていた。男の死を不思議に思い、釜次郎と潤之助が事件を解明すべく乗り出す…。

正直なところ、『消えずの行灯 本所七不思議捕物帖』を読み始める前は、宮部さんの『本所深川ふしぎ草紙』が念頭にあっただけに、チャレンジングな試みと思った。だが、読み始めると、主人公たちと同じように事件の謎が知りたくて物語に引き込まれる。

この捕物小説の探偵役は釜次郎(=後の榎本武揚)であり、主人公の潤之助はワトソン役を務める。釜次郎は江川太郎左衛門の塾で蘭学を学ぶ学生らしく、「迷信も天狗も嫌いですが、明らかに理に合わない説で誤魔化そうとするのはもっとも嫌いだ」と、論理的に推理して事件を解決していくのが何ともスッキリとして気持ちがよい。制約が多い中でのトリックを破る推理の面白さとチームプレイによる事件解決のプロセスなど、往年の推理小説の名手、都筑道夫さんの「なめくじ長屋シリーズ」を思い出した。

釜次郎の友人として、噺家の橘家小圓太こと出淵次郎吉、剣術遣いの今井君が登場し、二人の捜査を助ける。次郎吉も今井君も幕末明治に活躍した有名人の若きころの姿である。そのほかにも、幕末・明治に活躍する若き志士たちが続々と物語に登場して、話を彩っているところが作品の魅力のひとつである。有名人の使い方は、山田風太郎さんの『警視庁草紙』などの明治モノを想起させて、何とも楽しい。ほかの作品を読んでみたいと思う、新人作家の登場である。

おすすめ度:★★★★☆☆

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