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ハートウォーミングな新感覚時代小説『ガールズ・ストーリー』

あさのあつこさんの『ガールズ・ストーリー』を読んだ。時代小説らしからぬタイトルが『文蔵』に連載していたころ(2008年7月~2009年6月の連載。連載時のタイトルは「当世侠娘物語――ガールズ・ストーリー」)から気になっていた作品。

ガールズ・ストーリー

ガールズ・ストーリー

文蔵 2009.12 (PHP文庫)

文蔵 2009.12 (PHP文庫)

おいちは十六歳の娘ざかり。深川六間堀町の菖蒲長屋で、町医者である父。藍野松庵の仕事を手伝い、忙しい毎日

を送っていた。長屋の一間で薬草の匂いに包まれて過ごす日々に満足していた。いつか父のようになりたいと思いを胸に秘めて。おいちが他の娘と違うのは、患者が背負っている何か―憎悪とか想いとか妬みとか―病のもと、怪我の理由、事情が見えるのだった。そんなある日、かつて松庵の医術に助けられたという生薬屋の若旦那鵜野屋直介が松庵とおいちの長屋にやってきた…。

『弥勒の月』と『夜叉桜』の濃密なサスペンス性、キャラクター描写の確かさ、プロットの巧みさなどエンターテインメントとしての完成度の高さから、あさのさんが面白い時代小説の書き手の一人であることは認識していた。

弥勒の月 (光文社時代小説文庫)

弥勒の月 (光文社時代小説文庫)

夜叉桜 (光文社時代小説文庫)

夜叉桜 (光文社時代小説文庫)

しかし、『ガールズ・ストーリー』はタイトルだけでなくチャレンジングな作品で、『弥勒の月』とは別の味の時代小説である。

おいちの持つ不思議な力を生かしながら、ちょっぴりミステリータッチでハートウォーミングな良質な時代小説に仕上がっている。松庵の秘密、おいちの恋、新たな患者と事件など、もっともっと続きが読みたいので、続編を期待したい。

宮部みゆきさんの時代小説が好きな人に、あさのあつこさんの時代小説を薦めている。時代小説で年頃の娘を描くこと、娘力(女子力というべきか)をテーマにすることにもっとも長けているのがこの二人である。読者に対する親切さというか、あふれるサービス精神というか、期待を裏切らない面白さの仕掛けがうれしい。