武家

作家

杉本苑子さんと江戸の水

杉本苑子さんの短篇時代小説集『冬の蝉』を読み終える。丁寧な時代考証をベースに、高い物語性で、江戸という時代と場所が堪能できる素敵な作品集である。「菜摘ます児」葛西の場所外れにある、お花の茶屋に、突然、鷹狩りの帰途の将軍家治がやってきた。白湯...
市井人情

江戸四宿の一つ、内藤新宿

内藤新宿は、甲州道中の起点として知られているが、江戸の初めから宿場町であったわけではない。元禄十一年(1698)に、それまで甲州道中の第一宿は高井戸宿だったが、日本橋からの距離が四里と道のりが長くて何かと不便だった。浅草阿部川町の名主・喜兵...
作家

杉本苑子さんの時代小説

時代小説を集中的に読み始めて10数年が経つが、その作品をほとんど読んでいない時代小説家が何人かいる。主義主張があって読書リストから外しているわけではなく、ボタンを掛け違えたように、なぜか読むきっかけがつかめないという事情だ。杉本苑子さんはそ...
作家

忘れられない時代小説作家

白石一郎さんの『東海道をゆく』は、福岡藩の名物老人十時半睡とともに江戸時代の東海道を旅できて楽しかった。とはいえ、読み進めて紙数が少なくなるにつれて、淋しく何とも言えない喪失感にとらわれた。そして、十時半睡の東海道の旅は、ほぼ中間の新居の関...
女性

武家の女性を描いた時代小説

引き続き、乙川優三郎さんの『武家用心集』を読んでいる。前回、藤沢周平さんを想起させると書いてしまったが、「しずれの音」や「うつしみ」、「磯波」のように女性を主人公にした作品では、まったく違う個性や作風を感じる。藤沢さんが下級藩士の視点から物...