(こはるびのゆきおんな・はたもとえしかきとめちょう)
(おがさわらきょう)
[捕物]
★★★☆☆☆
♪旗本の息子で浮世絵師の藤村新三郎が活躍する捕物シリーズ。『瑠璃菊の女』、『寒桜の恋』、『蛍火の怪』に続くシリーズ第4弾で文庫書下ろしの今回は、河童、座敷童子、雪女と、日本古来の妖怪を題材にしているところが興味深い。
著者は、武蔵大学教授で、小笠原恭子の著者名で、『かぶきの誕生』(明治書院)、『出雲のおくに』(中公新書)、『都市と劇場』(平凡社選書)などがある。東京・本郷生まれで、少女時代は『銭形平次』に憧れていたという。
元禄期を舞台にした、この作品を読むと、当時の旗本が置かれている社会的な地位、心構えがよくわかる。最初は主人公の人遣いの荒さ(自分ではあまり動かず、周囲の人間をこき使う。使う側も当然のように使われる)=殿様ぶりに違和感を覚えたが、当時の身分制を考えれば、こっちの方が自然なことであるのに気付いた。
以前に、主人公の藤村新三郎は、時代小説界を代表する、着道楽、おしゃれヒーローと書いたことがあるが、今回もその伊達男振りは健在。彼の衣装の美しさを文字面だけでは想像できないので、ビジュアル化されると、楽しいのだが…。
TV化を考えているという、坂東八十助さん(作者自身もモデルの一人に想定して描いたそうだ)の解説が、作品に惚れこんでいるだけあって、見事なのにビックリした。
物語●「膳を貸す河童」新三郎は柳原土手で、若衆顔の美しい女とすれ違った。その頃、矢のお蔵の堀に河童が出て、通りかかりの臆病者の尻小玉を抜くという噂が職人の間で広がっていた…。「十万石の座敷童子」新三郎は、父で御使番を勤める藤村新左衛門に呼ばれて、四谷の屋敷に参上し、奥州二本松・丹羽家の江戸屋敷に現れた、座敷童子の怪の話を聞き、その解決を委ねられた…。「小春日の雪女」長谷川町の新三郎の借家へ、今戸から百姓の老婆がやってきた。吉原で亡くなった娘の敵を討ってほしいという。大川では、雪女に執り殺された土左衛門があがった…。
目次■膳を貸す河童|十万石の座敷童子|小春日の雪女|あとがき/解説 坂東八十助