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純情ももいろ日記と中田雅喜さんのこと

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『純情ももいろ日記』

『純情ももいろ日記』中田雅喜(Aki Nakata)

今回は、時代小説でも時代マンガでもなく、「月形龍之介HP」の作者で、マンガ家の中田雅喜(なかたあき)さんが、コミックエッセーを刊行されたので紹介する。

この本を読むまで、迂闊なことにこの本のこと、知らなかった。「ももいろ日記」は、1985年~90年にかけて『リイドコミック』の巻末を飾り、90年に単行本になり、当時、女の子がごく自然体でその日その日に感じたことを日記風に綴ったHマンガということで、ずいぶん話題になったそう。(カマトトぶっているわけではないが、「少年マガジン」一辺倒で、青年誌を全く読まなかったので。)読者の方がモキモキモッキリのさつまいもを編集部に送りつけられたり、テレビのワイドショーに出られたりと…。で、その伝説の本が、当時、一読者だった編集者によって今回、文庫化されたんだそう。そんなわけで、いよいよ本と初体面となるわけだが、夜遅くにしか自宅に帰らないので、会社で本を受け取ることにしました。スキあらば、空き時間にでも読もうと目論んだわけだが…。

しかし、仕事場のデスクの前で、ももいろの表紙を開いて唖然、パラパラとページをめくって、あたりをキョロキョロ見まわして、サッとカバンにしまい込んだ。(あとで、作者に「ほんとにね。会社に送れなんて、度胸あると思ってた」と言われてしまった)

そして、期待しつつ、家に帰って、早速、じっくり読んだ。

「女性にも性欲はある」という女性のホンネが、開けっぴろげに、関西人特有の「面白く生きる」ためのエッセンス=笑いとサービス精神を交えて描かれている。同棲中の方や結婚を控えている方、妊娠中のカップルにはとくにおすすめ。うんうんってうなずきたくなるエピソードがある。

青年誌に連載されたので、Hなシーン(お約束)も多いのだが、登場人物たちが個性的でおもしろい。(とくに作者のご両親がいい味を出している、思わず、田舎の母を思い出した)。絵が親しみやすくて読みやすいせいか、イヤラシイ感じがなく、楽しい語り口とあいまって読了感はよかった。

京都出身の作者が描く、京都人の暮らしぶり、生態も興味深かった。以前に、土方歳三を描いた、北原亞以子さんの短編小説『降りしきる』(講談社文庫)を読んでいて、うまくイメージできなかった、「おけら火」で新年の雑煮をつくるというシーンが、『純情ももいろ日記』にも描かれていて、やっと解決した。

京都育ちって、時代小説(コミックも)を書くうえでも、時代劇をつくるうえでも大きなアドバンテージだなって思った。作者の中田さんは、今、月形龍之介と坂東妻三郎を中心に映画創成期の人々の物語をマンガ化するべく、奔走中とのこと。『純情ももいろ日記』を読んで、ますます作者の夢が一日も早く実現することを願う次第だ。と、同時に制作日記にも期待したい。

1999/10/18

◎月形龍之介HP http://homepage1.nifty.com/bikenshi/

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