人情味たっぷり、南北かけもち同心が活躍する捕物シリーズ第三弾

北町南町 かけもち同心 星を継ぐ者いずみ光さんの『北町南町 かけもち同心 星を継ぐ者』(コスミック出版・コスミック時代文庫)は、北町奉行所と南町奉行所の両方で、姓名掛同心を務める服部梅三郎が活躍する人情捕物小説シリーズの第三弾です。

北町奉行所と南町奉行所は、対抗意識が強くて、ことあるごとに衝突するライバル関係であった。時の筆頭老中の三枝和泉守正弘は、そんな状況を憂いて、事件の早期解決と江戸の治安維持を願って、北町奉行所の姓名掛同心・服部梅三郎に南町奉行所の同職を兼務させて、両奉行所の架け橋にしようとした。
その梅三郎は、南町の与力の家に、北町の同心が婿入りする話を耳にする。縁組みを機に、南北の交流が密になると期待するが、一つの殺人事件の吟味をめぐって両者に軋轢が……。

与力の家に婿入りをする同心の活躍を描く「第一話 初手柄、玉の輿同心」のほか、御家人株を買って町人から同心になった男が登場する「第二話 町人上がりと風来坊」、青山の文月の風物詩、星燈籠をめぐる秘話を描く「第三話 祈りの火・星燈籠秘話」を収録しています。

「こんなことも申しておった。ある者にこう言われたというのだ。梅三郎という男は、見えないものを見ようとする。人の見ていないところで真心を尽くす、それが服部梅三郎なのだと」

主人公の梅三郎は、北町奉行所の姓名掛同心で、ふとしたことから老中首座の三枝和泉守の知己を得て、南町奉行所の同心もかけもちすることになります。姓名掛とは、与力、同心の名簿を管理する極めて地味なお役目です。

役目そのままのように、梅三郎は定町廻り同心に匹敵するような捕物の腕を持ちながらも、人情味が厚く思いやりがあり、北も南も同じ仲間という意識で、同僚の捕物の黒子に徹します。読み味がよい作品に仕上がっています。

 星燈籠は、毎年七月、青山百人町にある甲賀屋敷の与力、同心らがそれぞれの屋敷に盆燈籠を高々と掲げる祭事である。その人気が高まるにつれ、年々、その高さを競い合うようになり、遠くから見ると星々が夜空に浮かんでいるように見えることから星燈籠と呼ばれ、江戸庶民に親しまれていた。

この作品の面白さの一つが、こうした江戸の風習を巧みに物語に取り入れている点にあります。「第二話 町人上がりと風来坊」でも、六月の祭事の一つである中橋天王社の祭礼が描かれています。この日、庶民は町奉行所の見学ができて、記念として紙に包んだ赤飯を頂戴するのが何よりの楽しみにしていたそうです。

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『北町南町 かけもち同心 星を継ぐ者』

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